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故郷は青き星
第三話
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う和毛──にこげ、フルント人が生まれて一ヶ月ほどで全身に生えるとても柔らかな体毛。4・5歳ほどで全て抜け落ちるが、その後も頭部・耳・首元・背中・腕・脚・尾には和毛とは別のより硬い体毛が生え変わる──がよだれでベトベトになったルシャンは涙目で、彼女に抗議の視線を向ける。
 
「ごめんなさいね。ママ、エルシャンが可愛すぎてちょっと自分を見失っちゃったわ」
 エルシャンは母の過剰なスキンシップの中で唯一、この顔舐めが苦手だった。フルント人全体として普通──犬だけに──なスキンシップの一つなのだが、彼の人格のほとんどを形成している地球人、田沢真治である部分にとってそれに対する抵抗感を失うのは難しかった。

「でも戦争だから人が沢山死ぬんでしょう」
 落ち着きを取り戻した母に──まだ、くるんと綺麗に巻いた尻尾が左右に振れている──エルシャンは脱線した話を元に戻すように話を切り出した。
「ママが生まれるずっと前には、この戦争で沢山の人が死んだって聞いてるけど……余り人が死んだって話は聞いたことが無いわ。ああでも10年以上前にペルセウス腕の……確かラナクダ星系に突出した【敵性体】の部隊が侵入してきて、避難の遅れた多くの住民が犠牲になって、100年来の大惨事として大きなニュースになったわ。あれは本当に痛ましい事件だったわ……」
 母はあえて詳しい犠牲者の数には触れなかったが、一星系の避難の話であり莫大な数の犠牲者が出たことはエルシャンにも察しはついた。だが戦争中なのに人が死んだという話を余り聞かないとはどういうことか?
「どうして戦争なのに人が死なないの?」
「昔と違って今の戦争はね。人が誰も乗ってない兵器が戦うのよ」
 そう来たか!エルシャンは思わず叫びそうなった。無人兵器の大部隊が宇宙空間で戦いを繰り広げる。SFである。ついにSF的な展開がやって来た!と小さな巻き尾が解けてピンと天を指すほどテンションが上がる。そんな息子の様子に再び母の理性が崩壊したのは言うまでも無かった。

 その後、理性を取り戻した母から聞きだした情報によると、実際の戦闘で死者が出ないのは、そもそも戦場には人間が同調した擬体しか存在せず、フルント人パイロットもフルント星にいながら、遙か数千光年──時にはそれ以上離れた戦場で戦っているので、実際の戦闘で人が死ぬと言うことは無いとのことだった。
 その説明の中の数千光年以上離れた場所と、ほぼラグタイムが無しに通信を可能とする技術──FTLC(超光速通信:Faster Than Light Communication)これはフルント星の技術でなければ、この銀河の技術でもなく、銀河系外より伝えられた技術とされる。1万光年をほぼラグタイム無しに情報伝達を可能とする──に対して興奮したため、再び顔中を母の唾液まみれにすることとなったエ
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