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故郷は青き星
第三話
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かけてくる相手に答えたいという持ち前のサービス精神から『えーしゃん』と返事しようと意を決し声を出してみる。しかし口から出たのは「えぇぇあ」だった。
 その結果に落ち込むと同時に、生まれ変わったのかもしれないと疑いが彼の中で確信に変わりつつあった。
「エルシャン。ママに返事をしてくれたの?!」
 生まれたその日に、謎の呼吸困難から意識不明状態に陥った息子から一週間も片時も離れずに看病を続けてきた彼の母はユーシンは、自分の呼びかけに返事をしたその声に狂喜した。
「エルシャン。良かった。本当に良かった。良かったよぅエルシャン」
 泣きながら息子を抱きかかえると、医者を呼ぶのも忘れてそのまま抱きしめ続ける。
 そんな彼女の様子にエルシャンは、自分は彼女の子供として生まれ変わったんだろうなと実感したのだった。相変わらず何を言ってるかは理解できなかったが……

 それから時は流れた。
 授乳時に、母の大きな胸に抱かれ、口元に寄せられた白く柔らかな乳房の頂点にある朱鷺色の乳首から甘い匂いがすると、照れる──彼の前世である田沢真治の享年30。むき出しの女性の胸に何も感じないほど枯れる年齢ではなかった──がそれを実感する暇もなく、身体が自分の意思とは関係なく勝手に動き、その先端を口にくわえてしまったことに驚いたり、吸うと入ってくる温くて薄くて微妙な癖のある母乳が何故かものすごく旨く感じられて、満腹になるまで吸うのを止められなかったことに驚いた。
 そして赤ん坊生活を続けている内に『赤ちゃんプレイは有りだな』と変な性癖に目覚めてみたりと様々な経験を積んだのだった。
 最初は母親や、存在感の薄い父親の容姿から、エルシャンは自分が生まれたのはファンタジーな世界だと思っていた。
 自分に寄せる両親らしき人たちの顔がファンタジーモノのゲームに登場する、所謂獣人と呼ばれるキャラクターに酷似していたためだった。
 だが日が経ち次第にはっきりと見えてくる視界の中、病室の様子を見てそうではないどころか、前世の地球よりはるかに進んだ文明社会に自分が触れている事に気付かされる。
『ファンタジーじゃなくSFかよ!』口が利けたならそう叫びたいエルシャンであった。

 やがて1歳になり、日常会話程度の語彙──ただし、きちんと発音は出来ない。種族的特徴で声帯の発達が遅く辛うじて言葉らしきものを発するのは2歳を過ぎが頃になる──を身につけたエルシャンは貪欲にこの世界を知ろうと努力するようになる。
 そのきっかけは、ふと目にしたテレビ──結局、文明が進んでもスイッチを入れるだけで無料で情報や娯楽を垂れ流すテレビという存在は滅びる事は無かったようだ──に、この星が属する銀河のディスク面を上からの角度で写した銀河とその周辺のCGが映されていた。
 それがエルシャンには、前世の天
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