第一話
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規模な侵攻作戦においては母艦種を護衛するが、今回の作戦には参加していないようだった。
機体に搭載されたレーダーの索敵範囲を映す、コックピットの前面に投影された立体映像にはまだ敵影は無い。
どうせ擬体を使うと言う設定なら、コンソール周りを含む視覚情報をプレイヤーの脳へ直接送り込めば良いというプレイヤーの意見が多かったが、βテスト前に試験的に実装した結果、視覚情報により乗り物酔いに近い症状が起こり易い事が判明したとの事で、コックピット前方の空間に光学映像とレーダーから得られた情報を元にCG化した映像を投影する方法がとられている。
『全ターゲット補足。各機に情報をリンクします』
同時に、目の前を自機の索敵範囲外に位置する敵影として表示された青い点が塊となって埋め尽くす。
「うわっ!」
思わず柴田は声を上げる。
SF/A-104。彼の愛機の機種名であり、この編隊を構成する主要機種であった。
全長約30m。縦長の凧方──菱形と同じく直交する対角線を持つが、向かい合う辺は平行ではなく、菱形の任意の角を対角線を延長した線上に移動させた形──の平べったいシルエットで、機体全体が揚力を得られるリフティングボディを採用。宇宙空間での戦闘を主たる目的としながらも大気圏内の空戦を可能とし、兵装の交換で対艦攻撃から対地攻撃も可能であるが、世代的には2世代前の旧式の機体であり、決して【敵性体】に対して優位に立てる兵器とはいえない。現在の連盟軍では操縦のし易さが取り得の練習機扱いというのがゲーム上の設定だった。
そんな事を思い出した彼の心の中で、先程まで頼もしく感じていた300機余りの『大編隊』から、『大』の字がどこか星の彼方にまで飛んで行ってしまった。
「まさか、いきなり無理ゲーって事は無いだろ」
その様なゲームが無いわけでは無いとは思いつつも、自分を納得させるように小さく呟いていると、青い点が自機のレーダー範囲内にして有効射程外を示す黄色へと変化していく。
ごくりと音を立てて唾を飲み込みたいところだが、幾ら高度サイバネティクスの擬体といえども、そんな機能は搭載されてはいない。
電脳空間での五感の再現を可能とするダイブマシーンならば、飲食すら違和感な可能だと言うのに、ゲームの設定に沿ってあえて機能を封じていることに、柴田は妙に凝っているなと感心する一方で、これだけリアルなら撃墜されたショックでチビってしまう可能性に気付く。
「こ、これは絶対に墜とされるわけにはいかない!」
彼としても大学生にもなって、お漏らしするのは世間体以前に自分で自分を許せそうに無かった。
実際はゲーム内で失禁しかねないような状況に陥っても実際の肉体で失禁することは無い。
ゲーム内で擬体を動かす時に、同様に実際の肉体が動く様な事態にならないよう
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