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故郷は青き星
第一話
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「愛機で飛ぶソラは良い……」
 漆黒の闇の中を駆る愛機のコックピットの中、独りパイロットが呟きを漏らす。
 彼が操縦桿を握る愛機は航空機では無く、飛ぶのもソラと言ってるのも空でもなく宇宙である。
 ついでに言うと初任務で愛機と呼ぶほどの愛着も無く、もし愛機とやらが喋れたならば即座に「こいつ馴れ馴れしいわ」と言う事だろう。
 更に言うと現在彼は単機で自由に宇宙を飛んでいるのではなく、可住惑星へ侵攻中の敵対勢力艦隊の迎撃任務で、自動操縦による300機を超える僚機と共に大編隊を組んで飛んでいる。
 つまり雰囲気に酔って漏らしてしまった恥ずかしい戯言にすぎなかった。
 その恥ずかしい人物は太陽系義勇軍アジア第12宙空師団所属パイロット柴田浩二義勇宙士。
 太陽系義勇軍アジア第12宙空師団とは、連盟軍サジタリウス腕方面軍所属、第1211基幹艦隊所属、第136機動艦隊所属の第2飛行師団を形成する太陽系義勇軍パイロット部隊であり、日本人によって構成されたその部隊の正式名である。

 現在、太陽系が属する天の川銀河は謎の【敵性体】による侵略を受けていた。
 銀河系外の不可視領域──地球から見て銀河系中心の回転楕円体であるバルジに遮られて観測不可能な領域──より渡ってきた【敵性体】について分かっている事は、天の川銀河、いや全宇宙で知的生命体の全てと言って過言ではない炭素系生命体とは異なる珪素系生命体であるということのみ。
 珪素系生命体とは炭素系生命体にとって意思の疎通すら適わない存在。
 炭素系生物からすれば半ば永遠と呼んでも良いほどの長大な寿命を持つも、その思考・動作はきわめて遅く、彼等にとって人類を含む炭素系生命体の寿命など一瞬に等しい。
 またライフサイクル自体の長さから種として変化に乏しく、故に進化の速度も非常に遅かった。
 天の川銀河系内において珪素系生命体の存在は、古来より僅かながら発見され確認されていたが、近年は数多く発見されている。その理由は簡単な調査では生物であることすら確認できず単なる石や岩と認識されていたためだった。そして、そのどれも原始的な生命体であり知性体と呼ぶには程遠い存在でしかなかった。
 珪素系生命体が知性体と呼べるまでに進化するには、炭素系生命体に比べると遙かに長い時を重ねる必要があり、研究者の間では冗談交じりに宇宙の終わりにも間に合わないと言われていた。
 500年前に【敵性体】の存在が確認されるまでは……
 そのことから【敵性体】は天の川銀河系外の炭素系生命体による文明によって作られた生体兵器という説を始め様々な説がとびかう、今もって謎の存在である。

 【敵性体】はスクタム−センタウルス腕(みなみじゅうじ腕・たて腕)──天の川銀河の中心部のバルジを貫く軸状の構造体の両端から延びた2本の主腕となる渦
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