無印編
第十話 裏 (なのは)
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
不評を買うようなことは口に出せない。万が一にでもいい訳と思われたくないから。だから、なのはが言えたのは、やはりごめんなさい、だけなのだ。
だが、なのはをフォローしてくれたのは、その蔵元翔太だった。
若干、事実は捻じ曲げられていたが、確かになのはが外に出たのは悪くない、とフォローしてくれていた。
その翔太が作り上げた事情を聞いて、恭也の怒りが若干和らいだように思える。
―――やっぱり、蔵元くんはすごいな。
なのはは改めて思った。自分には絶対、そんなことはできないから。何もいえないだろうから。だからこそ、兄に物怖じせずにきちんと事情を話せる翔太が羨ましかった。
その後、なのはと翔太と恭也は、翔太の家に向かって歩く。その間、なのはの間に会話はなかった。翔太と恭也が少し話しているぐらいだ。なのはは時々、翔太の横顔を盗み見ていた。
翔太の顔はクラスの女子が騒ぐほど格好良いという顔立ちはしていない。ただ、身なりはきちんとしている。寝癖もなければ、服装もよれよれとしていない。身長はなのはよりも少し低いぐらいだろうか。
極論を言ってしまえば、どこにでもいそうな普通の小学生。特徴らしい特徴もない。それが蔵元翔太だった。
現場から翔太の家は意外と近かったらしい。十五分ほどで翔太の家に着いた。
普通の二階建ての一軒屋。なのはの家と比べると若干小さいかもしれない。
「今日は、ありがとうございました」
「いや、礼には及ばない」
気がつくと、翔太が恭也に礼を述べていた。なのはからしてみれば、その態度を見ていると本当に自分と同い年かと疑いたくなる。それほどまでにできた子供なのだ。蔵元翔太とは。
そして、なのはたちは帰宅する。だが、背を向けて帰る直前、家の前にまだ立っていた翔太が口を開いた。
「高町さん」
振り返ると、そこには、笑顔で手を振る翔太の姿が。そして―――
「また明日」
そう口にした。
最初、なのははその言葉が理解できなかった。また明日。それは、明日も会おうという約束の言葉。なのはにとって初めての言葉。じゃあね、やさようならなら何度だってある。だが、友達のいなかったなのはにとって明日を約束するような「また明日」という言葉は初めてだった。
しかも、それは、あのなのはが憧れた蔵元翔太から。
蔵元翔太からだからなのか、それとも初めての言葉だからなのか、どちらかは分からない。いや、もしかしたら両方かもしれない。
だが、その言葉は確かになのはを幸せにしていた。なぜなら、なのはにとって憧れだから。こうして別れ際に明日を約束することは。
それを理解したとき、なのはの心の底から嬉しさがこみ上げてきて―――
「うんっ!」
自然に笑って
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ