無印編
第九話 後
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間は短かった。この状況に慣れてくれば、大体のことは許容範囲内だ。
そして、音がした病院の敷地内を覗いてみると、そこには折れた木と木の上に立っている昼間のイタチと折れた木の下敷きになっている得体の知れない真っ黒い何か。
―――なんなんだ? あれは。
僕は知らず知らずのうちにそれに恐怖を抱いていた。
蔵元翔太という人間に残っている本能が警告を鳴らしていたのかもしれない。黒い何かが持つ得体の知れない強大な力を。
僕が得体の知れない何かの持っている力に戦いていると、まるでそれを無視したかのように首から下げた赤い宝石を揺らしながら僕に飛び込んでくるイタチ。突然のことに僕はイタチを反射的に受け取ってしまった。
「ありがとうございます。来てくれたんですね」
そして、そのイタチは礼を述べた。
「……助けてください、って言われたら来ないわけにはいかないからね」
もう、この程度では驚かない。今更、イタチがしゃべったところで驚く理由はない。
それよりも、再起動した思考が問題だった。僕の本能は間違いなくあの黒い何かから逃げることを推奨している。ちなみに、理性も全会一致で逃走案を可決している。
「とりあえず、何か言いたいこともあるだろうが、逃げながらでいいかな?」
もちろん、返事など聞いていない。なぜなら、下敷きになってもがいていた黒い何かは、僕を十人足しても足りないであろう重量の木を下から持ち上げて立ち上がろうとしていたのだから。
僕は、イタチの返事を聞くことなく、一目散にその場から逃げ出した。
◇ ◇ ◇
逃げながら聞いた話では、どうやら彼(?)は、何かを探してこの町に来た異世界人らしい。宇宙人とは違うのだろうか、と思ったが尋ねるような余裕はない。しかし、その探し物は、彼自身の力だけでは集めることができず、夕方や今のように助けを求めていたらしい。
もしかして、集められる目算もなくきたのだろうか。いや、それよりも、誰かの助けを借りないと見つけられない探し物ってなんだろうか。人海戦術なら分かる。だが、あの得体の知れない何かを見た後では、そんなことは言えない。話の流れから明らかに彼があの得体の知れない何かに勝ることができなかったとわかるから。
「つまり、君はあれに勝る力を持つ誰かを探していた、ということかな?」
「そうです」
いとも簡単に言ってくれる。だとすれば、完全に僕ははずれだ。確かに、輪廻転生という超常現象と体験したという意味では常人とは異なるかもしれないが、あの得体の知れない何かに勝るような力を持っているわけではない。いわゆるサイキッカーやパイロキネシスならまだしも、僕はただの知識が同年代よりも多いただの小学生だ。あるいは、戦国時代の軍師のよ
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