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リリカルってなんですか?
無印編
第九話 後
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ので至って健全な子供である。

 さて、イタチをどうするか、結局、結論が出ることはなかった。
 飼い主を探すか、あるいは誰かが妥協して飼うかは別として、何かしらの対処を考えなければならない。

 いや、待てよ。あのイタチ、小さな宝石を首から下げていたような。そう、それで僕はペットだと思ったんだ。なら、もしかして、本当の飼い主が別に―――っ!?

 いるのか? と思考をめぐらしたところで、突然、頭の中に割り入るように聞こえる声。しかも、聞き覚えがある声だ。そう、忘れもしない塾に行くとき、イタチを見つける前に聞いた声にそっくりだった。その声は塾の帰りと変わらず、助けを求めていた。

 ―――僕の声が聞こえるあなた。お願いです! 僕に力を……僕に少しでいいですから力を貸してください! ―――

 力を貸してください、といわれても困る。この身はただの小学生。多少、普通の小学生よりも知識があるだけの人間に過ぎない。財力があるわけでも、腕力があるわけでもない。助けを求められても何ができるというわけでもない。

 ―――お願いします! 時間……が―――

 ブツンと突然、頭に入ってきた声は、始まりが唐突であれば、終わりも唐突である、といわんばかりに話の途中でバッテリーが切れた電話のようにプツンと切れてしまった。

 さて、最後まで助けを求めていた声であるが、どうしたものか。

 当然、ここで僕が助けに行く義理はない。この声の正体は確かに気になるものの、一晩寝てしまってもう一度声が聞こえることがなければ、数年後に怪談話として思い出せるぐらいだろう。

 そもそも、僕が昼間予想したように幽霊だとすれば、この声はもう助けとと助けを請うものの、もう助けられる状況にない。確か、僕が読んだ限りでは死ぬ間際の無念で地上に縛られる幽霊のことを自縛霊といっただろうか。その類であろう。
 ならば、僕が声の主を見つけたとしても助ける術は既になく、この年になって仮に霊感に目覚めていたとしても、漫画のように突然霊力の使い方に目覚めるはずもないので僕では何の役にも立たない。

 そう、冷静に考えれば、ここで僕が「助けて」と請う声に応える義理は何所にもなく、このまま宿題を終え、昨日読みかけの本を読み、就寝するのが一番であると理性の部分は訴えている。

 だが、だがしかし、夕方の先生の優しい声と笑顔がどこかで再生される。

 ―――君がしたことはとても尊いことなの。その気持ちを忘れないで。それが私にとって一番の報酬なんだから。

 あのときの気持ちを「助けて」という声に誘発されて思い出してしまった。
 どうやら、僕はこのまま布団の中に入ったとしても、この声が気になって眠ることはできなくなってしまったらしい。

 もしかしたら、僕と同じよう
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