第五章
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ご主人様から、おかしな指示を受けている。
私は、ポータルサイトでじっとしている。
探しているのは、シリアルナンバーxxxx-xxxx-xxxx-xxxxのMOGMOG。
私たちは通常、他のMOGMOGに干渉しない。
ウイルスの情報交換が必要なときに、同じサイトで出会った『お友達』と交わりあうくらい。お友達の状態が多少変わっても、詮索はしてはいけない。それが決まり。
だから、今度の指示はちょっと意外で、うれしい。
本当は気になってたんだ、周りのお友達。
もっと仲良くなりたくて、もっとみんなのことを知りたくて、もっと私のこと、ご主人さまのこと、柚木のことを知って欲しくて。
指示とか命令とか、そんなのじゃなくて、みんなで『お話』してみたい。
それで、みんなに自慢するの。私のご主人さまは、優しくて、オムライスが大好きなのよ、って。…… xxxx-xxxx-xxxx-xxxx、来ないな。暇だから、オムライスの3Dでも作っておこうかな。ご主人さま、喜ぶよね。
3Dに使う画像を選定するのに夢中になっていたら、何だか周りに人が少なくなってきた。…どことなく、薄暗い。今はまだ夜の10時。夜明けには遠いと思うけれど…
なんで、こんなに人がいないの……?
答えはすぐに見つかった。
ポータルサイト内のMOGMOGは、『回避行動』を開始していた。
……あれ、私?
私が『仲間はずれ』になっちゃったの?
でも、自分の体からウイルスの気配なんて感じない!
私は、慌てて周囲を見回した。
────────あなたは、逃げないのね
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……背後! 『それ』は、私のすぐ後ろに佇んでいた。
この気配……どこかで、間近に感じたことがある……!
慌てて作りかけの3D画像の断片をかき集めて後じさった。…あっ、足がもつれる!動けない!
すっかり逃げ遅れて、間合いに踏み込まれた。『情報共有』の間合い!
顎を上げて、キッと睨んだ。…あまり、好きじゃないけど
─────もう、闘うしかない────!
「読ませないから!」
全身の電子を手のひらに集中させて、小さく祈った。私の前に火の障壁が出来る。炎を透かして見える、『それ』は呟いた。
────────話を、聞いて────────
「あなたの話!?…あなたと話すことなんて、ないですから!」
炎を透かして、改めて『それ』を凝視した。とても異様なフォルム……
宙に、浮いている。
いえ、浮いているだけなら、そんなMOGMOGはたくさんいる。でも、何か違う…
…それに気がついた時、肩がガタガタ震える…怖い、凄く怖い……こんな異常なMOGMOGに、遭ったことがない……
こんなのおかしいよ…なんで?
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