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くらいくらい電子の森に・・・
第五章
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ていたら』
「ちょっとつつけば、不自然な動きをすると思う。それも見越して、わざと自然に振舞うかもしれないけど、それならそれで思う存分追跡してやればいい」
紺野さんが、大きく息をつく気配が伝わってきた。
『…いずれにせよ、待つしかないな』
「そうね…また来るのか、もう来ないのかも分からないんだし」
『…やっぱりお前向きの仕事だったな。ありがとうな、姶良。お礼に作っておいてやるよ』
「何を」
『エロい着せ替』プツ。

……言い終わる前に通信を切って、仰向けに寝転んだ。
暗い天井を見上げて、今の話を頭の中で繰り返す。

───なんか、少しキナ臭い感じになってきた。
内部の人間が一枚噛んでるかもしれない誘拐事件って何だよ。
普通じゃない。紺野さんは一体、なにを敵に回したんだ。
僕は危機回避センサーを無視してまで、こんなことに関わって大丈夫なのか。

───柚木は、大丈夫なのかな。

「あの…ご主人さま?」
ビアンキのカメラが、僕を見下ろすように動いた。液晶に目をやると、ビアンキが不安をたたえた表情で僕を見下ろしていた。まだ口がもぐもぐ動いている。僕の電話中、メールの添付ウイルスか何かを食べていたようだ。…あぁ、ウイルスからりんご作るアニメーションを見そびれた。あれ、結構好きなのに。
「…ごめん。さっきのソフト、アンインストールしておいて」
「はい、ご主人さま。…あの」
「ん?」
「…なにか、あったんですか?」
「どうして」
「今日は、なにか様子が違います。…なんか…不安…そうな」
自分の方が不安そうな顔をして、ビアンキは少し目をそらした。そしてもじもじと体を動かす。今持っている語彙の中から精一杯、僕に掛ける言葉を捜している。
僕は少し体を起こして、ビアンキと目を合わせる。
…あんなソフト、使えなくてよかった。
「ありがと、心配してくれて…ビアンキ、これからしばらく、起動し続けてくれるかい?」
「Googleで、ですか」
「ああ。張り込みを続けてほしい。ただし…」
「…ハイ」
「接触はしない。あくまで遠巻きに、行動パターンだけを観察するんだ」
「え!?…で、でも、それじゃ、あの子のご主人さま……」
「ご主人さまに悪いことをした奴を見つけるために、必要なんだ。…今回だけは、あくまで遠巻きに。刺激をしないで観察してほしい」
ビアンキはまだ納得できない表情で、上目遣いに僕を見つめていたが、こくんと頷くと、スカートをぱっと払って、IEのアイコンをほうきでポポンと叩いた。
「…そのほうきで叩くの、可愛いね」
「可愛いですか?」
少し機嫌を直したみたいだ。僕はもう一言、可愛いよ。と付け加えて、再びごろんと横になった。暗い天井を見上げながら、誰に言うともなく、呟く。

「…明日は、柚木と同じ授業か…
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