本編前
第八話
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身に覚えのないことで褒められることほど、気味の悪いものはない。
怒られるならまだ分かる。人間、誰しも都合の悪いことは忘れてしまうからだ。
だが、他人から褒められることほどの良い事であるならば、自尊心を高めるためにも細かいことまで覚えているはずだ。
だからこそ、身に覚えのないことで褒められるのは気味が悪く感じられる。
例えば、今の僕のように。
「いや、よくやってくれた、蔵元。さすが我がクラスの学級委員長様だ」
「……なんの話ですか?」
先生がここまで褒めるのは珍しい。なぜなら、先生にとって僕とは特異な存在として認識されているからだ。
僕がテストで満点を取ったとしても当然。授業中に質問の内容を尋ねて答えられて普通。先生の中での僕の存在はそんな存在だ。
よって、褒められることなんて滅多にない。なにせ、他の面々であれば、褒められるほどのことは僕にとって出来て当然という風に認識されているのだから。
その先生が、帰りのホームルームで僕を呼び出して開口一番がこれだ。
「高町の話だよ」
「高町さんですか?」
その名前を聞いたのはつい最近、というか、昨日のことだ。先生に頼まれて彼女の家に行ったのだから。そこで、先生から頼まれた調査結果と僕が気づいたことを伝えに行っただけだ。
しかし、それしきのことで褒めるだろうか。ただ、伝えに行っただけなのに。普通なら、「ご苦労」で終わってしまいそうだが。
「今日になって学校に復帰した」
「はぁ、そうなんですか」
高町さんとは去年クラスメイトだった程度の繋がりしかないので、感想としてはこの程度だ。
しかし、今日から来てたのか。知らなかった。隣のクラスなので僕の耳には届いてこない。僕が気づいたことが真実なら、彼女には親しい人間がいないから、余計に人伝いに情報が入ってこないのだ。
だから、僕にとって高町さんが学校に来ているというのは初耳だった。
「そうなんですかって、お前が訪問した次の日から学校に来たもんだから、お前さんがなにかしたのかと思ったんだが」
「先生の勘違いです。僕は、昨日は高町さんのご両親としか話していませんし」
そもそも、拒絶されたのだが、それは言わなくてもいいだろう。
「なんだ、そうか」
そう呟く先生の顔には、明らかに褒めて、損した、という言葉が読み取れた。この先生、フランクなのはいいのだが、こんな表情を教え子に見せていいのだろうか。教師として若干問題と思うんだが。
「なに、お前だから問題ない。他の生徒にはこんな態度とらないさ」
そのまま疑問を投げかけてみたら、返ってきた答えがこれだ。
確かに、この先生、他の生徒だともっと優しいというか、柔和な態度と言葉になる
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