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リリカルってなんですか?
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第七話 裏 (なのは)
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流されるが故に誰の気にも留められず、友達は出来ない。最悪な悪循環だった。

 だが、それでもなのはは、根底の『いい子であれば』を信じていた。いい子であればいつか必ず友達が出来る、と信じていた。彼女自身には自覚はなかったかもしれないが。

 そんな中で、なのはのクラスメイトである蔵元翔太は、まさしく理想の体現であった。

 誰からも嫌われておらず、誰からも好かれ、誰にでも優しくて、誰とでも友達で、頭もよくて、先生からも頼りにされている。

 それは、彼が転生者という二十歳の頭脳と精神を持っていることが大きな要因なのだが、そんなことを知らないなのはにとって、蔵元翔太は彼女が目指すべき姿だった。

 彼をそういう風に見る切欠は、なのはのクラスメイトが喧嘩しているのを止める場面を見てからだ。

 あの時、なのはも動いていた。ただし、翔太とは異なり、土足を嫌って校舎の中を通って中庭を大きく迂回する形でだが。

 そのため、中庭を突っ切った翔太よりも遅れてしまい、結局、なのは喧嘩をとめることはなかった。
 だが、その喧嘩の止め方の一部始終を見ながら思う。自分には無理だと。

 なのはは、止めるにしても、おそらくアリサを叩くことでしか止められなかっただろう。だが、翔太は言葉で止めた。それはなのはにとっては大きな差だった。なぜなら、なのはは、暴力が悪いことだと知っていたから。

 なのはと翔太の絶対的な差を感じてしまった。

 それが切欠となって、なのはは翔太をよく見るようになり、理想の体現者とみなすようになった。

 彼女は、翔太を真似ようとした。しかし、なのはがいかに大人びていようとも、二十歳の精神には追いつかない、追いつけない。

 どうして、あんな風に意見がいえるのだろう。なのはは、嫌われることが怖くて何もいえないのに。
 どうして、あんなに頭がいいのだろうか。なのはは、間違えてはいけないというプレッシャーで、頭が真っ白になってしまうのに。
 どうして、ああも他人に優しくできるのであろうか。なのはは自分のことで手が一杯だというのに。

 結局、なのはは蔵元翔太という影を追うあまり深みにはまってしまった。

 誰にも意見が言えず、ただ流されるまま、存在するだけの存在になってしまい、テストの点数は、前よりも悪い点数は取れないというプレッシャーから、頭が混乱し、さらに点数を下げるという悪循環に陥るという結果に。

 なのはが思い描くいい子とはかけ離れた姿だった。

 しかし、それでも、家族の前ではいい子でいなければならないという強迫観念にも近い根本のせいで、その悩みを口にすることもなく、表面上は平然と学校に通っていた。

 だが、そんな不安と不満を吐き出す場所もなく彼女の心の内に溜まっていく汚濁は、
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