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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』
第七話
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る事になった。

「その後は王女の意思に委ねるそうだ。国に戻るか、日本……特地で暮らすか」

 正直に言えば日本で暮らせば各国のスパイがヒルダを誘拐しようとするなど企む事は明白である。なので政府は日本に保護を求めるなら出来るだけ特地で暮らしてと思ったのだ。

「まぁそれは彼女の判断だろう。我々は帝国とは交渉はするが決裂すれば侵攻するのは決定している。準備は怠るな」

「分かりました」

 今村中将はそう言ったのであった。




「中尉、人だかりが見えます。恐らくはコダ村からの避難民かと思います」

 夜が開けてから朝食をとって出発すると前方から人の集団が見えてきたらしい。

「伊丹大尉達は確認出来るか?」

 樹は鉄帽をかぶり直す。実は少し仮眠していた。

「確認しました。避難民の前方に九四式六輪自動貨車がトロトロとですが走っています」

「……確かにな」

 樹も確認する。多分、あれには伊丹少佐も乗っているのだろう。

「水野、手を振ってろ」

「了解です」

 水野が荷台で手を振る。

「向こうも気付いたみたいです」

「やれやれ……一先ずは合流成功やな」

 樹はそう呟いた。



「伊丹大尉、摂津以下応援部隊として合流しました」

「おぅありがとう……九四式六輪自動貨車がもう数台なら嬉しいんだが……」

「仕方ないですよ伊丹大尉」

 ブツブツと文句を言う伊丹に樹はそう言った。

「ま、それはそうと隊列に加わってくれ」

「了解です」

 そして樹達も隊列に加わり、コダ村から避難する住民の手伝いにはいった。

「……暑いですね中尉」

「文句を言うな水野」

 つい先日に雨が降ったので舗装していない道(当たり前だ)はぬかるんでいる。

 九四式六輪自動貨車なら多分大丈夫だが、馬で引く馬車だと泥濘に嵌まりやすい。

 今も第三偵察隊が泥濘に嵌まった馬車を押して泥濘から脱出させている。

「エルザさん達の体調は?」

「今のところは問題ないです」

 樹達が助けた妻と娘――エルザとエミリアは後ろの荷台で休憩している。

「水野、荷台から後ろも偵察しておけ。もしかするともしかするもな」

「……怖い事言わないで下さいよ中尉」

「可能性は高い。今の状態は炎龍というやつか、それから見たら絶好の獲物だからな」

 樹は水野にそう説明する。水野は顔を青ざめながら荷台から顔を出して後方を警戒する。

 それから二時間が経過した。

「中尉、ドラゴンのドの字も出ないですよ」

「馬鹿やろう。そこは龍だと言っただろ」

 水野は安心するように言う。なんだかんだ水野も実は恐かったりしている。


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