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How much
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安いおっさんを飼ってみなさい。ちゃんと育てられたら、次はもう少しいいおっさんを買ってあげるから」と僕に言った。
 僕は様々な小さなおっさんの中から、目が優しいおっさんを選んだ。「このおっさんに決めるね」
 母ちゃんは「うん」と一言だけ言った。
「あと最後に、ここで売られているおっさんは安全ですよね」母ちゃんが言った。
「大丈夫ですよ。ちゃんと検査は受けています。すべて安全なおっさんです。ただ、万が一子供が産まれた場合、始めは注意して見守って下さい」
「子供? なんで注意しなくちゃいけないんですか?」僕が聞くと店員が、いや検査されていませんからね。万が一へんなおっさんが産まれたら、すぐにペットショップか保健所に連絡して下さい。
 そういえば聞いたことがある。毎年ごく僅かではあるが、へんなおっさんが産まれ、犯罪が起きている。その犯罪を犯すおっさんは、食べ物でいうなら訳あり品、物でいうなら不良品だ。それらのほとんどは、保健所に引き取られ、処分される。でも、ごくたまに保健所から逃げ出したりする奴や、へんなおっさんが産まれても届出を出さないやつがいる。そうして世に放たれた、小さなおっさんが、闇ルートで売買されたりして要人の暗殺やスパイ活動など様々な犯罪を犯すらしい。
 おっさんは、陸でも、水中でも飼うことができる。僕は放し飼いにするか、鳥かごで飼うか、水槽で飼うか迷い水槽で飼うことに決めた。
 120cm水槽におっさんを入れ、水を7割、砂地を3割のスペースで区切った。砂の所におっさん用の小さな家を作り、家の中にベットをいれ、外に小さなパラソルを置いた。
 まるで、どこかのリゾート地のようだ。水の中にはおっさんがいつでも食べられるように柔らかい口当たりの良い、わかめを浮かせた。

 おっさんを飼って二年が過ぎた……。
 すっかり、おっさんも家族の一員になった。春には家族とおっさんで花見をし、夏は、おっさんと山や海でバーベキュー、秋はおっさんとおいしいものをたらふく食べ、冬はおっさんと雪だるまを作ったり、温泉に行ったりして遊んだ。僕達の心は幸せで、満ち溢れていた。
――その日はある日突然訪れた――
 僕がおっさんを眺めていると、おっさんが苦しみだした。僕はすぐに病院に連れて行こうとした。でもおっさんはかぶりを振ってその後、手を開いて、<待て>の合図をした。どういうことなのだろうか。僕が30分ほど様子を見ていると、おっさんは「ゴホッ、ゴホッ、ウエッ」と苦しそうにうめきだした。僕は二日酔いかなと心配そうにおっさんを見つめているとおっさんの口が開いた。そしてベチャっと何かを吐き出した。僕はその吐き出した物体を恐る恐る見てみた。
「あ、赤ちゃんだ!」僕は歓喜の声を上げた。小さなおっさんの口から、もっと小さなおっさんが、おっさんのまま出てきたのだ。

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