Sept
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「おまえの『先生』を探しているらしい」
「『先生』?」
「誰かがおまえによからぬことを吹き込んでいるんじゃないかと探し回っているよ」
「…ああ」
どうやら先日、ルパンの前で任務だの何だの言ったことが尾を引いているらしい。
わたしは痛むからだを起こして、肩を竦めた。
「ルパンがどうしようと関係ない」
「ナーシャ、おまえはルパンを甘く見すぎている。他人を過度に見くびると足下を掬われる」
そんなことはないと思ったが、わたしは頷いておいた。
「はい、『先生』」
エルはわたしの言葉を聞いて、ため息をついた。
そして笑った。
「俺がルパンに見つかったら、おまえのせいだぞ」
そうは言うけれど、エルがルパンに見つかることはきっとないだろう。
この男は残虐で非情な中身を隠して、親しみやすく明るい外面を被っている。ルパンとも仲が良い。
「あいつの中で、俺は『ゼロ』とまだ会っていないんだからな」
わたしがエルと面識があることを本当に気づいていないのならば、やはりルパンもそこまでの男だ。当然わざわざ気づかせるようなヘマはしていないが。
そもそもルパンだけじゃなく、ほかの誰もがわたしがエルとこうして会っていることを知らない。エルから密やかにたくさんのことを学んでいることを、知らない。
わたしは一秒でもはやく強くなりたいのに、この研究所でわたしがやることといえば、研究員の当たられ役になることだけ。寝て、起きて、また寝る。外にも出られない、やることもない、幼い頃のわたしはただ気だけが急いでいた。
なぜわたしがスパイ本部ではなく、研究所に預けられたのかは知らない。本部にこんな子供がいればただ邪魔になるからという単純な理由なのかもしれないがそれはわたしの知るところじゃない。きっとどのみち本部には送られるのだろうがそれまで悠長に待っている余裕はわたしにはなかった。
わたしにただ流れる日々を眺めるだけの時間は苦痛でしかなかった。何かしていないと、どんどんドイツが遠ざかる気がした。
ルパンはわたしを「子供らしく」在らせようとするから、ルパンに頼むのは気が進まなかった。
そんな中、エルが現れた。
この男にものを教わるのはこれまた苦渋の選択だったが、わたしにはほかに道がなかった。研究所に顔を出すスパイはそこまで多くない。わたしは、強くなるために、より強い『先生』を求めていた。
暇つぶしか、ストレス発散か、エルは胡散臭い笑みでほぼ初対面のわたしの願いを受け、こうし
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