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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十八話 新城直衛の晩餐
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ら――
――うん、そうなってしまうか。
あらゆる意味で空恐ろしい結論を記憶の隅に封印する。

「それにしても監察課は知っているが、防諜室?
俺は名前くらいしか聞いたことがないな。」

「俺も知らん、羽鳥に聞け。」

愚痴は零しても何をしていたのかは殆ど話さなかった、勤務先を考えれば当然だろうが。

「おい、俺にやらせるのか。」
羽鳥が苦笑しながらもそれに応えて簡潔に答える
「簡単に言えば軍へ潜り込もうとする外の連中を如何にひっとらえるかを考えている場所さ。
本部の傘下にそうした組織がある、俗に言う特高憲兵ってやつだ」


「だがそうした仕事は貴様の処が導術を一手に握って将家から離れたと聞いたが。」
 一人だけ下戸である樋高が水を呷りながら口を挟んだ。

「あぁ、規模はそれ程大きくはない。
寧ろ水軍の傘下にある内外情勢調査会の方が規模は大きいな。
だが、何度か〈帝国〉諜報総局の連中を摘発した事や魔導院の潜入員を放り出した事がある。」
 軍監本部と言えば参謀達が将家間の勢力争いに没頭している、そんな印象が先行している。

「内部抗争も確かにあるし、それで対応が遅れる事もあったがな。
取り纏めている奴が厄介極まりない野郎で――」
酔いがまわったのか既に愚痴になっていっている。この無駄に流暢な語り口は愚痴ならではだろう。

「だがなぁ。 〈帝国〉の侵攻を予測できなかったのだろう?
幾ら御大層な組織があって頭数が揃っていても働かなくては意味が無いだろうが。」
じろり、と羽鳥の方を見ながら古賀が唸った。

「情報は水軍も魔導院も掴んでいた。
握り潰したのは市場が惜しい大店連中の意を受けた執政府と懐が寂しい将家連中だ。
俺の聞いた話が正しければだが。」
 顔を赤らめた羽鳥が噛み付く。
「おい待て、それは。」
槇が身を乗り出す。
「だから、聞いた話だ、ただの噂だよ。」
羽鳥が軽く手を振って宥める。
「・・・・・・昨年末から両替商達が〈帝国〉から引き上げを始めていたのは確かだ。
根はある噂だな、何かしら嗅ぎつけていたのは確かだ。」
 槇も身を戻し、呟く。
「金の恨みを受ける側は逆に良い思いをしている。
可能性に過ぎない情報では腰も重くなる、か。今も昔も人は変わらないものだな。」
 史学寮の者らしい事を古賀が唸りながら云った。
「あくまでも噂が正しければの話だがな。
二十五年もまともな戦が無かったのだ。やむを得ないところもある」
 羽鳥が顎を掻きながら言葉を継ぐ。
「陸軍も一応、兵団を年初に派遣していたな。
軍に改組しなかった事は、〈帝国〉を刺激する事を恐れていたのだろう。
まぁ最初から向こうがその気だった以上、無意味だったな。
貴様が回り回ってまた面倒を背負う羽目になった
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