本編前
第六話
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町さんを心配してお見舞いに行った同級生として。結果は分かっているのだから先生が直接行けばいい、といったのだが―――
「保護者が教師の調査結果を信じるわけないだろう」
―――という言葉と共に一蹴された。
確かに公式的にアンケートをとったわけでもないので、普通に先生が行っても理解されないことは間違いない。だから、僕に行けというのは何か違うような気がするのだが。
「お前以外に頼む奴がいないんだよ。頼む」
先生からそうやって拝み倒されては行かないという選択肢はなくなる。僕は仕方なく内申点のアップと引き換えにこうやって高町さんの家へとやってきたわけだ。
いつぞやの屋敷と違って僕の家と同じような一軒屋だ。僕は、躊躇することなく真っ白いインターフォンのボタンを押した。
ピンポーンというありふれたチャイム音がなって少し経った後、『はい、どちら様でしょうか?』と聞いてくる女性の声。高町さんの声じゃなさそうだから、おそらくお母さんだろうか。そう思いながら僕は質問に答えた。
「僕、高町さんの同級生の蔵元翔太です。高町さんが休んでると聞いてお見舞いに来ました」
『あら、なのはのお友達?』
同級生が来たというだけで浮かれすぎではないだろうか、と思わせるほど明るい声で答えてくれる高町さんのお母さん。その声がプツッというインターフォントの通信が切れたと思わせる音がした後、家の中から廊下をスリッパで駆けるような音がして、家のドアが開いた。
「いらっしゃい、えっと、蔵元くんだったかしら?」
そう言いながら外に出てきたのは、若い女性。おそらく、インターフォンに出たのはこの女性だと思われる。
もしかして、僕はとんでもない間違いをしてしまったのではないだろうか。どうみても、彼女は高町さんの母親というには若すぎるような気がする。僕が見た限りでは、二十代中盤ぐらいだろうか。
高町さんのお母さんと口に出さなくてよかった、としみじみ思う。
「わざわざ、ありがとうね。なのはに会っていく? 中に入ってちょうだい」
なぜか、家の中に招かれた。高町さんの状況からして、友達が来ればもしかして、という希望を持ったのかもしれない。
はて、なんにしてもこれは好都合だ。ここで玄関先で用件だけを聞かれたとしたら、こんなところでシリアスな話を延々としなければならないのだから。高町さんのお姉さんは何か勘違いしているかもしれないが、ここはこの勘違いに乗っておこう。
「それじゃ、お邪魔します」
高町さんのお姉さんに導かれるまま、僕は高町家の敷居を跨ぐのだった。
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