本編前
第四話
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「あのね、さっきから思ってたんだけど、蔵元くん少し堅すぎるわね。もうちょっとフレンドリーに行きましょうよ」
「フレンドリーにですか………」
さて、困った。月村さんのお姉さんは、明らかに大学生、いや、高校生ぐらいである。つまるところ、小学生の僕からしてみれば、雲の上の存在といっていいほどの人だ。そんな人にフレンドリーに、しかも女性。どうすればいいんだろう?
「……すずか、あんたのクラスメイトの男子ってみんなこうなの?」
「ううん、蔵元くんぐらいだよ」
「そうね、こいつぐらいね。後はみんなガキよ」
僕がどうやってフレンドリーにしようか、と悩んでいるところに三人の会話が聞こえてくる。
僕が小学生らしくないということぐらいは気づいている。しかし、どうすればいいのだろうか。小学生らしく振舞う? つまり、それは一日中、僕は自分の行動を一つ一つ意識しなければならないということになる。一瞬たりとも気の抜けない日常。とても肩がこりそうだ。その手段を選ぶなら、僕は今やっているように素を出して、ちょっと大人びた小学生と見られたほうがよっぽどマシである。
閑話休題。
そんなことよりもどやってフレンドリーにするか、である。
「う〜ん、そんなに悩むことないのよ。とりあえず、呼び方を変えてみましょうか」
「呼び方ですか?」
「そう、月村さんのお姉さんなんて長いでしょう? しかも、かなり他人行儀だし。そうねぇ、苗字だとすずかと被っちゃうから、名前の忍でいいわよ」
―――忍。
そういえば、最初にそう名乗ってたな。あの時は、緊張していて殆ど耳に入っていなかったような気がするが。挨拶できただけでも上出来だ。笑われたけど。今は、紅茶のおかげもあってかあのときほど緊張していない。
そうか、なら月村さんのお姉さんは、月村忍って―――っ!?
あのバニングスさんのときと同じように不意に脳裏に一瞬だけ映る一枚の絵画。
―――洋館の一室。時刻は夜。ベッドの上、半裸で微笑む月村さんのお姉さん。窓から見えるのは満月。ただし、月村さんのお姉さんの瞳は真紅。
――――ああ、繋がった。繋がってしまった、というべきか。
思い出した。記憶の奥底に泥だらけになって埋まっていた記憶が、月村さんのお姉さんの容姿と『月村忍』という名前、そして、物語の舞台となった洋館の雰囲気という要素が重なり合って初めて掘り起こされた。
―――月村忍。
僕がプレイした『とらいあんぐるハート3』のヒロインの一人であり、僕が思い出した記憶が確かなら、月村忍は吸血鬼である。しかし、物語で知られているような吸血鬼ではなかったように思える。にんにくや十字架といったものは出てこなかったはずだし、月村さん
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