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リリカルってなんですか?
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彼女はやや不満げな顔をしながらも、僕に向けていた憤怒の感情は成りを潜めていた。おそらく、頭では納得したが、心では納得できないというものだろう。今はそれでいいのではないか、と思う。こんなものはこれから十年以上続く学生時代の中では何度もあることなのだから。とりあえず、彼女にとらせる行動は一つだ。

「バニングスさん、自分が悪いことしたって分かった? 大体、髪の毛は女の命って格言があるぐらいなんだから、髪の毛を引っ張っちゃダメだよ」

 ついでにもう一つの暴力への自覚を促しながら、僕は振り返り、未だうずくまったままの月村さんに声をかけながら手を差し出した。

「大丈夫?」

「うん、ありがとう。蔵元くん」

 どうやら、僕がバニングスさんと話している間に泣き止んでくれたようだ。目を僅かに赤くしながら、月村さんは、僕の伸ばした手を掴んで立ち上がった。
 立ち上がった月村さんは、バニングスさんと目があうが、どうやら彼女も気恥ずかしいのだろう。月村さんと目が合うと、すぐさま視線を逸らした。

 次もお膳立てしなくちゃいけないのか? まあ、意地っ張りな女の子はそんなもんなのだろう。

 そんな風に納得しながら、僕は、バニングスさんに「ほらっ」と言って先を促した。次に何をすればいいか、彼女は理解しているはずだ。

「……うっ……カチューシャ無理矢理取ろうとしたり、髪の毛引っ張っちゃって悪かったわよ。ごめんなさい」

 途中までは視線を逸らしていたが、最後のごめんなさいは、目を合わせて頭を下げていた。

「うん、もういいよ」

 そんなバニングスさんの謝罪を月村さんは笑って受け入れていた。

「はい、喧嘩はおしまい。これで仲直り、二人は友達だね」

 僕は、両者の右手を取って、強制的に握手させた。もっとも、二人とも、え? と困惑気味だったが、気にしない。こういうことは、適当に強制させたほうが上手く行く場合もあるのだ。特に二人ともクラスメイトから明らかに浮いているから、上手くいくだろう。単なる勘でしかないけど。

「ほら、もう話せるよね? だったら、友達だよ。それに、バニングスさんは最初からそのつもりだったんでしょう?」

 たぶん、そうだ。そうでもなければ、バニングスさんがカチューシャなんかに興味を持つはずがない。単にあれは、話の種にするためのものだったのだろう。たぶん、バニングスさんも一人は寂しくて、でも今更、どこかのコミュニティーに入れてくれ、とはいえなくて、だから、一人だった月村さんに話しかけようと思ったのだろう。もっとも、話しかけたのはよかったが、その先が酷く失敗していたが。

「そ、そんなことはないわよっ!」

 だったら、どうしてこんな中庭に月村さんを追ってきたんだ? とは、聞かない。もう、すで
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