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リリカルってなんですか?
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うでもいい。とりあえず、バニングスさんをとめないと。

 髪の毛というのは、筋肉と違って鍛えられず、また、頭皮に直接埋まっているため引っ張られると非常に痛い。どれだけ屈強な男であっても髪の毛を引っ張られて怯まないという人はいないぐらいだ。それは、子供の力であっても同様で。今、月村さんは相当痛いに違いない。

 幸いにしてバニングスさんは白いカチューシャを奪うことに夢中で僕には気づかなかったようだ。月村さんをその痛みから解放するために僕は、月村さんの髪の毛を引っ張っている方のバニングスさんの手首を掴んで、強く握った。
 いたっ! という痛みを訴える声とともに月村さんの髪の毛は解放される。人は手首に何かしらの衝撃が走った際に反射的に手を広げてしまうものなのだ。カチューシャを追っていたほうの手は間髪なく動き回るので捕らえようと思っても不可能だったが、髪の毛を掴んでいるほうの手は、さほど動いていなかったので捕まえるのは非常に楽だった。掴んだ手首は細く、子供特有というか、女の子特有というか、その両方の特性とも言うべく、暖かく、柔らかかった。

 半ば名残惜しいと思いながらも僕は、その手首を離し、髪の毛を離したときに開いた月村さんとバニングスさんの間に滑り込むように身体を割り込ませた。そして、急に髪の毛を離されたことで思わずかがみこみ頭を押さえている月村さんに話しかける。

「月村さん、大丈夫?」

 返事はなかったが、コクリ、と頷いているような動作を見せてくれたことから考えてもおそらく大丈夫だろう。
 だが、問題は背後にいるバニングスさんだ。

「ちょっと! あんたっ!! なにするのよっ!」

 背後から鋭い声。僕は、月村さんの様子を見るためにかがんだ姿勢から、両膝を伸ばして立ち上がり、振り返って僕とあまり伸張の変わらない女の子―――バニングスさんを見た。

 彼女の目は雄弁に怒っています、と語っており、僕に向ける敵愾心で燃えていた。

「なにするのよ、というのは僕のほうだと思うけど。どうして月村さんの髪の毛を引っ張ってたの?」
「あたしがそのカチューシャ見せて、って言ったら嫌だって言ったからよっ!」

 なんとも予想通りな展開なんだろう。ここで、カチューシャぐらい見せてやれよ、というのは完全な部外者。だったら、諦めろよというのは、子供心を分かっていない。

 子供にだって譲れないものがある。それが、月村さんにとってはカチューシャだったというだけだろう。そして、子供というのは往々にしてダメといわれるとどうしても欲しくなるものである。別にどうでもいいものでも、後から捨てるということが分かっているものであっても。その刹那に欲しいと思ったものは、どうしても欲しくなるのだ。それが、他人が持っているものであれば、尚のこと。特にバ
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