本編前
第一話
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ペタリとまた一つ『くらもとしょうた』と自分の名前が書かれたネームシールを明日から使う自分の鉛筆に張っていく。
延々と続けられたこの作業もこれで一時間近く経つ。僕の隣では、僕と同じような作業を同じく延々と続ける親父の姿が。
仮にこの作業が永遠に続く苦行であるならば、あと三十分も続ければ発狂しそうなほどであるが、流石に分量が多い入学前の準備とはいえ、二人で続ければ流石にそろそろ終わる。
「しかし、早いものだな。もうお前も小学生か」
親父の感心したような言葉にそうだね、と半ばやる気無げに呟き、僕にとっては延々と続けれた作業に終止符を打つべく、残り僅かとなったまだ名前のついていない道具にネームシールをペタペタと貼り付けた。
―――そうか、もう六年か……
僕はまだニコニコ微笑みながら最後の小学校入学セットにネームシールを張る親父に見えないようにこっそりとため息をついた。
それは、能天気に笑いながらシールを張る親父に呆れたのではない。明日からの―――二度目となる小学校生活を考えると憂鬱になるからである。
人生二度目の小学校―――我ながら可笑しいフレーズだとは思うが、事実なのだから仕方ない。別に外国に留学していて天才的な頭脳で飛び級した、とかそんな話ではない。日本の小学校に通うのが二度目なのだ。もっとも、最初の小学校はこの身体ではなかったが。
自分の納得している理論―――この精神論的な考えが理論といえるかどうかは甚だ疑問で仕方ない―――でいうならば、この現象は、輪廻転生というものだろう。家が仏教だったかどうかは知らない。かといって、キリスト教でもなんでもない。極一般的な日本人のようにクリスマスにはケーキを食べたし、新年には初詣にすら行った無宗教ともいうべき一家だった。しかし、たった一晩でもうすぐ卒業間近という身分から赤子の身に落とされた身としてはそれぐらいしかこの状況を説明できないのだ。
どうしてこうなったのか、僕には分からない。分かろうはずもないし、工学科だった僕に、授業と個人的な趣味で心理学を一応のレベルでしか学んでいない僕に、こんな精神論的なことを言われても分かるはずもない。しかし、考えなければ、この状況に納得できなければ、僕の頭が狂いそうだったし、なによりも赤子の身―――しかも、目もよく見えない、身体が上手く動かせない―――としては時間つぶしというべき行動の一つとしてこんな哲学的なことを考えざるを得なかったのだ。
そして、出た結論は、昔の人の言葉をあやかったものだった。
―――I think, therefore I am(我思う故に我あり)。
ついでに決めたこれからの行動指針は、―――ケ・セラ・セラ(なるようになるさ)―――である。結局、赤子の身がようやく歩けるような
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