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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#04 "What do you think about?"
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るか。その"モノ"には一体どんな価値があるのか。
大事なのはそこなんだよ」

レヴィの声は暗く、低く、部屋の空気と俺の鼓膜を震わせてゆく。

「アンタはこの"骨"に同情した」

レヴィの声が俺のところまで届いてくる。
左手に掲げられた頭蓋骨の、存在しないはずの視線と共に。

「そしてこの"勲章"にも情を移した」

今度は右手。
視線が骨、レヴィの顔、勲章の三つの間を揺れ動く。

「アンタが思い出なんてもんに、価値を見出だすのは自由だ。"骨"に同情するのも結構さ」

レヴィは俺から視線を外そうともしないまま、両手に持った物を床に置く。

「………」

「………」

先に視線を逸らしたのはレヴィだった。
俯き床に置いていた煙草の箱から一本抜き出し、ライターで火を点ける。

再び話を始めた時には煙草は(くわ)えたままだった。
煙を燻らせながら語る彼女の表情からはさっきまでと同じもので。
俺にはただ黙って見つめ続ける事しか出来ないでいた。

「けどな。アタシにはアタシの考えってもんがある。そこらに転がってる骨なんざ、道を歩く時の石ころと一緒さ。歩くのに邪魔なだけなんだよ。
後何だったっけ?勲章は艦長の物?だからアタシらが持っていっちゃいけませんって?
はっ!
石ころが石ころの持ち主だってのかい? どんな笑い話だい、そりゃ」

レヴィ………

「アタシにはただの石ころに、余計な感情を持つ事なんて出来ないね。
コイツらに改めて意味を持たせるとしたら、そりゃあな」

レヴィ……
君、何だってそんな目を………

「"金"だよ、ロック。
万人が認める世界共通の価値だ。金に変わるんなら石ころにだって意味はある。金にならないんだったら、そりゃ、ただの石ころのままさ」

金。

価値。

「アンタだって、日本にいた頃は金の為に働いてたんだろ。誰かの思い出の為になんぞ働いちゃあいなかったはずだ。違うっていうのかい?」

日本。

会社。

……裏切り。

「確かに日本にいた頃は、いや今だって働いてるのは金を稼ぐためだよ。生きていくためにも金は必要だ。
でも、金が全てじゃないだろ」

「全てだよ」

俺の振り絞るように発した答えは、一言で斬って棄てられた。

「金が全てじゃなきゃ、 他に何があるっていうんだ? 愛か?神か?笑わすなよ」

レヴィは口元を歪めて笑ったんだろうか。
その表情は笑顔というよりは、むしろ…

「アタシがまだ糞ガキで地べたを這いずり廻ってたあの街じゃあ、そんなもんケツ拭く紙ほどの価値も無かったよ。
中にはそんなもんに泣いて縋るやつもいたさ。大抵はどこかの時点で気付くけどね。
この糞溜めじゃあ、そんなもん意味がないと。
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