第七十六話
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はおやすみなさい」
と、そう言って甘粕はそそくさとユカリの家を辞し、外に出ると直ぐに携帯電話を取り出す。
自身の上司に連絡する為だ。
これはかなり頭の痛い問題になると、今から胃が痛くなる甘粕だった。
正史編纂委員会東京分室。
そこには甘粕に呼び出された沙耶宮馨が一人で甘粕の到着を待っていた。
ガチャリと扉が開き、甘粕が入室する。
「内密な急用と言う事で、今は僕しか居ないのだけど、それは僕のデートの時間をキャンセルをしてまで報告しなければならない事なのかい?」
馨の軽口に甘粕は真剣な表情を崩さない。
「ヴォバン侯爵がお亡くなりになりました」
「………どっち?」
この時間…アテナがユカリの家を訪れ、甘粕が監視に行っているはずの時間にそんな事を聞かされればおのずと犯人が絞れると言うもの。
それ故に「どっち」だ。
「ユカリさんです。どうやら昨日、私どもが帰ってからヴォバン侯爵が戦闘を仕掛けたようですな」
「それで返り討ち?」
「ええ。見事に石化していまして、私も一瞬彫像かと思いました程で…」
「石化…ね。よくもまぁカンピオーネを石化させれるものだね。もはやユカリさんを人間のカテゴリに入れてよいか疑問に思う…。もう一度聞くけれど確かにヴォバン侯爵は亡くなったのかい?」
「ええ。アテナのお墨付きをいただきました」
「なるほど…ね。…いやぁ…これは確かに緊急事態だね。どういう風に事を収めるかが問題だよ」
「そうですな…幸いなのはまだ誰もヴォバン侯爵が亡くなったと気付いてな点。それと…石化していたと言う点ですな」
「…アテナに擦り付けるつもりかい?」
「まつろわぬ神と戦って力及ばず負けた。これがベストではないかと…」
甘粕がこれらの隠蔽を提案する。
「実際私は直接草薙さんを打ち破る所を拝見しましたが、魔術師ですらカンピオーネに打ち勝てる存在は居ないのですよ。まつろわぬ神に負けた…そこが落としどころとして適当では無いかと思いますが」
「仕方ないね。どの道ヴォバン侯爵の不在は時間と共にバレるのだから、その方向で調整するよう努力しようか。しばらくは君にも休まずに調整の任務に着いてもらわないといけないね」
「……残業手当くらい欲しいものですな」
「はは、そこは因果な仕事だと思って割り切ってよ。それにしても、本当に最近は次から次へと神やカンピオーネで頭が悩まされるね」
「魔王を擁する国として当然の苦労とは思っていましたが…さすがにこの結果は予想外の連続ですな」
「本当だよ…」
二人はため息をついてヴォバン侯爵死亡の報の真実の改ざんに取り掛かるのだった。
…
…
…
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