第七十六話
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次の日の夜、いつものようにユカリの家にやって来た甘粕は庭に信じられないものを見た。
「あの、これはもしかして…」
「ふん、神殺しもたいした事もないのだな」
と、先に来ていたアテナが鼻を鳴らして答えた。
「御身が打倒せしめたのでありましょうか」
と、甘粕がアテナに問いかける。
結構な時間をこうしてユカリの晩餐で顔を会わせて来ていた二人だ。礼儀を失さなければ甘粕の言葉もアテナに耳に届くようになっていた。
「いや、妾が来たときには既にこのようになっていた」
そうアテナが答える。
「と言う事は…ユカリさん…でしょうね」
「当然よな」
改めて甘粕が料理中のユカリに問いかける。
「あの、ユカリさん。庭のあの石像なのですが…」
「ああ、あれですか。…昨日お二人が帰った後にやって来たんですよ。えっと、何侯爵でしたっけ?」
「ヴォバン侯爵ですな」
「そう、その人です」
それで?と甘粕は促した。
「ほぼ問答無用で私を殺しに来たので、返り討ちにしました」
「…………」
その言葉に甘粕は絶句する。
「正当防衛だと思いたいのですがどうでしょう?過剰防衛になりますか?」
「いえ、確かの彼の御人の性格とカンピオーネの脅威を考えれば正当防衛…に、なりますか?」
甘粕も言葉を濁した。
「えっと…それで、庭のあれは石化したヴォバン侯爵で間違いないのでしょうか?」
甘粕はそれにも驚愕する。カンピオーネの呪力耐性を突き破って石化させたのだ。
魔術師では到底出来る事ではない。
「そうですね。えっと、元に戻せとかですか?」
と、ユカリ。
「いえいえ、まさかっ!今石化を解けば間違いなく暴れ周り、周囲を飲み込み破壊する事でしょう」
勘弁してくださいと甘粕。
「そうですか。それは良かったです。…解除は不可能なので」
「そうなんですか…」
現象として石となり、既に変質しているのだ。それをもう一度元に戻せと言っても難しい。
「…死にましたか?」
「さあ、私には分かりませんね」
「あの石像から魂を感じない。この石ころはもはやただの抜け殻よな」
冥府の女神でもあるアテナのお墨付きが出た。
「すみませんユカリさん。急用が出来まして、今日はこれで失礼させていただきますね」
「え?夕ご飯は要らないんですか?」
「ユカリさんの夕ご飯はとても魅力的なのですが、…少々仕事が立て込んでいまして。今日は顔を見せて帰る予定だったのですよ」
と、即興で言い訳をする甘粕。
「そうですか。残念です。明日はご一緒しましょうね」
ユカリも嘘と分かって話を合わせる。
「ええ、是非に。それで
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