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エヴァンゲリオン REAL 最後の女神
使徒大戦
第一章
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 雄叫びを上げることもなく、ただ静かに四号機は立ち上がる。
 拘束具のない剥き出しの口元が、ヒトのように歪んだ。それがシンジには、カヲルの笑みに見えた。
「シンジ君」
 照明の死んだエントリープラグ内に、SOUND OINLYの通信が入った。前方モニターと同様に通信機は非常電源で動作が確保されているのだ。
「見ていて欲しい。ボクが君と同じ階梯(きざはし)に昇る姿を……ボクの覚醒を」
 四号機が槍に向かって手をさしのべると、槍はその手に向かって飛んでいく。そしてその手におさまった。当然だ、とでもいわんばかりに。
「弐号機の集めた因子、そしてアダムの欠片。それがボクのものになる……」
 ゆっくりと踏み出す四号機。
 そして動けない弐号機と、初号機。
 アスカは目の前に迫る四号機に恐怖した。アスカが明確な自分の死を意識したのは、これが初めてだったのかもしれない。使徒大戦が始まって半年以上が過ぎようとしているが、エヴァごしの戦闘は奇妙に現実感が欠落している。戦闘対象が幼児の戯画のようなふざけたデザインをしているせいもあるだろう。シンクロで感じる痛みも、物理的に痕が残るわけではない。
 アスカにとって戦闘は自己を照明する手段であって、ギリギリのところで命のやりとりをするモノではなかったのだ。
 だが今、眼前に迫るのは人型であり、異形に変形してもいない。そこに明確なヒトの意思を感じる。それは殺意である。
 四号機との戦いは、殺人──ヒト同士の殺し合いなのだ。その明確な殺意の前に、無抵抗で身を投げ出している。アスカの心をひたひたと犯すのは、無抵抗に殺されるしかないという認識であり、間近に迫った死への畏怖(いふ)だった。
「……死にたくない、死にたくないよぅ! たすけてっ、助けてママ! シンジ!」
 圧倒的な恐怖の前で、虚飾をはぎ取られた結果残るのは、一四歳の少女のかよわい魂だけだった。プライドも、虚勢も、隔意も、なにもかも無くしてアスカは助けを乞うた。少女も本当は理解していたのだ。少年がいつも自分を助けようとしていたことを。
 逆手に握りしめられた槍が、擱座(かくざ)したままの弐号機に迫る。アスカは思わず目をつぶった。
 キン!
 硬質な音をたてて、現出する六角形の障壁。
 死は訪れず、救いの神は意外な姿をして現れた。
「……綾波っ?」「ファースト!?」
 槍の前に身を投げ出すように現れたのは、綾波レイ。蒼銀の月の女神だった。
「──ファーストチルドレン。因子の足りないはずの君が既に使徒として目覚めていたとはね。楽しませてくれる!」
「目覚めたのではないわ。私は本来こういう存在なだけ」
 カヲルの悪態にも、レイはいつもと変わりない無表情のまま。
「どちらでもいいさ、因子を持っていることに変わりはないんだから。君の因
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