暁 〜小説投稿サイト〜
クレーマーは倒れやすい
第一章

[2]次話
                クレーマーは倒れやすい
 その客、石井太郎を見てだった。スーパーの店員達は嫌そうに囁き合った、
「また来てるよ」
「あの人文句ばかり言うからな」
「偉そうにネチネチと」
「細かいところまで」
「怒鳴りもするし」
「苦情もやたら書くしな」
 こう話していた、兎角だった。 
 石井は嫌われていた、定年を迎えた元学校教師で四角い顔にへの字になった口に剣呑な光を放つ目を持っている。小柄でがっしりした体格で短い髪の毛には白いものが混ざっている。
 その彼を見てだ、店員達は言うのだった。
「近寄らない様にしよう」
「関わらない関わらない」
「文句付けてきたら素直に頭下げていよう」
「嵐が過ぎ去るの待とう」
「そうしていこう」
 こう話してだった。
 店員達は彼を避けていた、だが彼は何かあるとだ。
 クレームを付けていた、その内容はというと。
「店の窓が汚れているとかな」
「ゴミ箱が汚いから撤去しろとか」
「あれこれ言ってくれるな」
「品揃えが悪いとか」
「その都度窓拭きやゴミ箱の撤去だよ」
「忙しい時に」
「ゴミ箱ないと何処に捨てるんだよ」
 店員達は彼のクレームに嫌気がさしていた、それで思うのだった。
「うちに来て欲しくないな」
「偉そうに言うから」
「文句言って怒鳴って」
「クレーマーとお客さんは違うし」
「いて欲しくないよ」
 こう言って来て欲しくないとおもっていた、だが。
 彼は店の近所で暮らしているのでよく来た、そして目を吊り上げさせて口を尖らせてクレームを言い続けて苦情を書き連ねていった。
 だがある日だ、急に来なくなった。
「あれっ、あの人来ないな」
「最近そうだよな」
「家がご近所でよく来たのに」
「それでクレームばかりつけてきたのに」
「来なくなったな」
「どうしたのかしら」
 最初は不思議に思った、だが。
 相手は迷惑なクレーマーだ、店員達はすぐにこうも思った。
「来ないならいいか」
「正直迷惑だったし」
「他のお客さんも嫌な顔していたし」
「いなくなって清々するよ」
「来なくなってよかったわ」
 誰もが喜んだ、それは夜のレジのアルバイトの学生達も同じだった。彼は昼に来るが窓拭きやゴミ箱の撤去といった対処を店の都合で夜に行うこともあって彼等も嫌に思っていたのだ。
[2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ