第二章
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「犯罪すれすれのことも平気でね」
「ばれないとだね」
「欲が深くてね、権力とお金が大好きで」
「その為になんだ」
「何でもする人だったから」
だからだというのだ。
「言うのは誰かの悪口ばかりでトラブルもよく起こしてヒステリーもしょっちゅうで」
「物凄い人だったわね」
麻衣も言ってきた。
「うちにもよく来てあれこれ言ってたし」
「そんなのだからね」
「身体壊したのね」
「病は気からでね、入院したら癌もわかったし」
このこともあってというのだ。
「長くないよ、けれどね」
「けれど?」
「お二人にも話してるし親戚にも知り合いにも話してるけれど」
佳穂理のことをというのだ。
「皆悲しまないしこっちの家族も兄弟の家族もね」
「同じだね」
「うん、ああして権力とお金ばかりで欲深く自分だけで生きていても」
大樹に話した。
「ああだよ」
「よくない結末だね」
「人にはそういうのこそ大事と言ってもね」
「ああなるね」
「そうだよ、ずっと悪口と不平不満とヒステリーばかりで誰からも嫌われていたし」
そうでもあってというのだ。
「お二人みたいに普通に生きるのがね」
「いいのかな」
「そう思うよ」
こう言うのだった、そして程なくだ。
佳穂理は死んだ、だが誰も悲しまず親戚も知り合いも葬式の後でやっと死んでくれたという風であった。
そして二人はというと。
大した騒動もなく暮らしていけた、息子も娘も大学を出て就職して普通の家庭を築き二人は定年しても貯金と年金があってだった。
慎ましいが穏やかに暮らせた、それで大樹は麻衣に言った。
「幸せだよな」
「そうよね」
麻衣も笑顔で応えた。
「とてもね」
「わし等はな」
「穏やかで何も困ったことはなくて」
「大してな」
「普通に暮らしているけれど」
「そうして普通に暮らせたらな」
「権力やお金がなくても」
それでもとだ、大樹は言った。
「いいんだ」
「穏やかで普通に暮らせたら」
「それでな」
「幸せよ」
「全くだな」
夫は妻の言葉に微笑んで頷いた、そして日課の散歩に出た。優しい日差しの中で散歩をしてまた二人は幸せを感じた。実に心地よいと。
真面目な夫婦の幸せ 完
2025・7・20
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