第一章
[2]次話
真面目な夫婦の幸せ
吉田大樹はサラリーマンで妻の麻衣はスーパーでパートをしている。地方都市の住宅街で一軒家をローンで建てて暮らしている。
二人共平凡な顔立ちと外見でよくも悪くもない。それこそ知り合いでもなければ誰もが擦れ違っても目もくれない所謂モブといった風だ。
二人共真面目に働いている、だがその二人に親戚の老婆有邨佳穂理は言うのだった、見れはゆがんだ顔で険しい目をしていて髪の毛も荒れていて姿勢が悪い。
「あんた達そんなのでいいの?」
「そんなの?」
「そんなのっていいますと」
「だから出世とかお金儲けとかね」
そうしたことをというのだ。
「欲しくないの?」
「いや、僕課長になりまして」
まずは大樹が答えた。
「管理職になったんで」
「お金は共働きでありますから」
麻衣も言ってきた。
「別にです」
「困っていないっていうの」
「はい」
佳穂理にその通りだと答えた。
「ですから別に」
「いいです」
「息子の光もすくすく育っていて」
「今度高校生です」
「高校も悪い高校じゃないですし」
「娘の八重子は成績優秀ですし」
「そんな普通のじゃなくてよ」
佳穂理は自分の言葉に無反応な感じの二人に言った、二人の家に呼ばれもしないのに上がり込んで紅茶とお菓子を出させて口にしながら何も口にしていない二人に言うのだった。
「鳥居ってもっと出世したり財テクとかね」
「いえ、別に」
「今で充分です」
二人の反応は変わらない。
「幸せですから」
「皆真面目に生きていて」
「真面目が何よ、ばれないと何をしてもいいし」
それでとだ、佳穂理は言うのだった。
「世の中出世とお金よ、だから私は不動産やってよ」
「会社やってですね」
「儲けてますね」
「そうよ、社長でお金もある」
自分のことを言うのだった。
「それが一番よ」
「そう言われましても」
「私達は別に」
夫婦は無反応なままだった、佳穂理はそんな二人にさらに偉そうに説教をして紅茶とお菓子をそれぞれお代わりをして帰った。
そして家の仕事に勤しんだが。
数年後彼女の息子がだ、法事の時に二人に話した。
「お袋動けなくなって」
「それでだね」
「貴方が跡を継ぐのね」
「うん、けれど脳梗塞で倒れるまで」
それで動けなくまでにというのだ。
「威張り散らしてあこぎなこと散々やってきて家でも横暴で我儘し放題でね」
「ああ、それでだね」
大樹はここまで聞いてわかって言った。
「後始末がだね」
「大変だよ、自分だけしかなくて」
そうした輩であってというのだ。
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