第3話 献身
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あの後、リリムがジュンゴと呼ぶ少年にずっと抱きつき頬擦りするのを無理やり引き?がすのに苦労し、すずかから事情を聞いた完全武装のノエルとファリンが部屋に突入してきて一触即発な雰囲気が生まれたのを仲裁するなど、忍に当初とは違った苦労が舞い込んできた。
それでも、当初心配していた命を賭けた戦闘、という事態にならなかっただけおおいにましね。
仲裁が終わっても、未だに警戒を解いていないメイド2人にため息をつくが、そう気持ちを切り替え、忍は話を進めるためリリムに視線を向けた。
「それでええと……リリムさん、でしたっけ?彼の容態は見てもらったとおりなんだけど。私たちが来てほしくない、って言った理由は分かってもらえたかしら。」
この悪魔??リリムは、今はこちらに敵意はないし、契約者を心配する(むしろ溺愛、と言った方が正しい)あたり性格もそれなりに誠実で、悪いものではないだろうと考える。
なら忍たちとしてもわざわざ強者たる彼女に敵意を向ける必要はないし、目の前の少年を助けたいと思っているのはこちらも同じだ。彼が絶対安静が必要なのだという事を理解してもらえたなら、すぐに部屋を出てもらいたい。
「あっ、名前で呼んでもらっちゃった♪ う〜ん、そうね。ニンゲンにしたらとってもいい対応だと思うわ。」
納得した様子を見せるリリム。じゃあ、と切り出そうとする忍に、「けど」とリリムが続ける。
「こんな様子だからこそ、私が必要なの。」
「……あなたに今何かできる、とは思えないんだけど。安静を保つのが、今の彼に一番必要な事よ。さっきみたいに抱きつきでもしたら、傷の回復は遅れるばかりよ?」
「むぅ〜、失敬ね! 悪魔だからって、何かを壊すしか能がないって思ってるの? だったら見せてあげるわよ、私のとっておき!!」
忍の言葉に、リリムが憤慨した様子でまた彼に抱きついた。
その様子に慌てて彼女を少年から離れさせようとする忍。何を聞いていたんだこの悪魔は、と愚痴りたくなってくる。
とにかく今はあの悪魔を引き?がさないと。そう思いながらも忍が足を踏み出した瞬間、リリムの体が光り出した。その光は、すぐにベッドに寝ている少年をも包みこんでいく。
「えっ?」
「な、何なのこれ……」
「すごい……」
今まで会話に入っていなかったすずかやノエルたちから驚きの呟きが漏れる。
何故なら、彼女たちの目の前で少年の傷?―ベッドとリリムの体で隠れて顔の様子しか見えないが?―が何も無かったかのように消えていったからだ。
忍も声には出さなかったが、口を手で覆い驚きを隠せない。
「ふっふーん。どう? 悪魔だからって、持つ力全部が物を壊すためのものじゃないのよ。私はこれくらいしかできないけど、格の高い悪魔
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