第3話 献身
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り探りではあるが、純吾は自分の決意を確認していく。それを威圧感を弱めることなく憂うものはじっと見つめる。
「だから……生きる事を諦めたくない。生きて、いつかアイリ達とまた会いたい!」
その言葉と共に、純吾は今まで逸らしていた目を、憂うものへと向ける。すぐにでも逃げ出したくなるような重圧が襲いかかるが、それでも負けじと視線をそらす事だけはしなかった。
しばらくの間、純吾と憂うものは無言で互いの視線をそらさずに見つめ合う。
そうして、純吾にとって永遠にも感じられるほどの時間が過ぎたように思えた頃、フッ、と憂うものが固く結んだ口を微笑へと変えた。
「そうか…。君の望んだ道は、私の願うそれと同じのようだ。……ティコ」
「はいは〜い! ジュンゴちゃんの強〜い『生きる意思』、私も確認したよ〜」
「ん…、じゃあ」
「ああ。君をこれから現実へと移す、少々荒いやり方になるが我慢して欲しい」
そう純吾の声に答えると、憂うものはパチン、と指を鳴らした。
音が鳴り止むと同時、純吾は青い焔に包まれた。熱くはなかったが、何も見えなかった暗い世界がゆらゆらと揺れる焔だけに変わったことにパニックを起こす。
「それではジュンゴちゃん☆ 新しい世界でもぉ、ハブ・ア・ナイスた〜☆」
「天秤の守護者……。いや、純吾。その世界を、頼んだ……」
焔の中でもがく中、不思議とはっきりと2人の声が響く。
咄嗟の事であり、その声が何を意味するのか純吾は聞き返す事ができなかった。
荒れ狂う感情をどうにか押さえこんで色々な角度へ視線を向けるが、やはり辺りは青い焔しか見えない。
そうして体を無理やり動かしたのがまずかったのか、やがて段々と視界が暗くなっていき……
「…………リリ、ム?」
「っ!……ぅん、うん!!」
次に純吾が目を覚ますと、目の前にはここ数日見慣れた美しい顔があった。自分と契約をしてくれた仲魔、リリムが自分に抱きつき、顔を近づけている。
その事に気恥ずかしさを覚え、リリムに声をかける。
「リリム。離れて……、恥ずかしいよ。」
「ダメ!! ジュンゴ一人だと絶対に無理するんだもん! もう絶対にジュンゴを一人にしてあげないんだから!!」
ひしと彼女は自分の体を抱き寄せ、泣きそうな声でそう言った。
あぁ、やっぱり心配をさせてしまったのか。
「離れて」と聞いた時の、くしゃりと歪んだリリムの今にも泣きそうな顔。馬鹿な事をした自分を、まだこんなにも心配してくれる。
心配してくれたリリムには申し訳ないが、自分と契約した仲魔はこんなにも優しい、その事に純吾は嬉しくなってしまう。
「……リリム」
「ん、なぁに?」
「一緒に
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