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ああっ女神さまっ 森里愛鈴
10 C2誕生秘話
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 愛鈴が5歳になる直前の、静かな午後。
 冬の終わり、天上界から届いた最新の空間投影ユニットを前に、ベルダンディーはそっと手を添えていた。
「これは、機械ではありません。『私たちの想いを、言葉のかわりに寄り添わせるもの』です」
 法術的な技術と科学の融合。
 立体投影による人格生成──通称「シーグル計画」。
 その第2号機は、誰よりも繊細な心を持つ少女のために設計されていた。
 空間に浮かぶ3D設計図、あまりに精巧であまりに繊細。
「AIではありません。愛鈴と生きるための、もうひとつの「ともだち」です」
 その言葉に、隣にいた螢一がうなずく。
「うん……本当は、何も渡さなくてもいいと思ってたんだ。でも……この子が、ふとしたときに立ち止まれるような『相棒』がいてくれたらって、思ってさ」
 ふたりの願いは、ただひとつ。
「自分たちがいない時、この子が笑って話しかけられる誰かが、いつもそこにいますように」
 起動実験の最中、空間に初めて浮かんだ3Dホログラムの小さな少女は、明るくウィンクして、こう名乗った。
「こんにちは、ホスト! あたしはシーグル2号機、通称C2! 今日からずっと、よろしくねっ!」
 その瞬間、まだ幼い愛鈴の目が、まるで本物の命を見つけたように輝いた。
「あたしは愛鈴。よろしくC2」
 正式リリース。
 その夜。愛鈴の部屋の天井には、小さな星が投影されていた。
 ベッドの脇で、C2がぽふんと現れる。
「ねえねえ、ホスト! 今日のお話、まだでしょ?」
 5歳の愛鈴は、布団の端をぎゅっと握りながら、少しだけ笑ってうなずいた。
「でもホストはやめて。アイリって呼んでよ」
「はいアイリ!」
「……じゃあね、“神さまと猫と、おうちの星”の話、きかせて」
 C2はにっこりして、映像を広げながら語り始める。
「むかしむかし、とってもやさしい神さまと、迷子の猫がいてね……」
 声は軽やかで、でもあたたかかった。
 愛鈴のまぶたが少しずつ落ちていく。
 そっとC2が彼女の髪をなでるように見つめる。もちろん、それは触れない手。でも、「そこにいる」感覚は、しっかり届いていた。
 その様子を別室のモニター越しに見ながら、
 ベルダンディーはそっと両手を胸に重ねた。
「……もし、いつか私たちがこの子のそばにいられなくなっても。この子には『いつでも話せる誰か』が必要だと思ったの」
 螢一も隣で、小さく笑った。
「うん。でも、単なる代わりじゃない。この子にしかできない関係。「親じゃない、でもずっと一緒にいる誰か」って俺たちには、ちょっと、できない役割だからさ」
 ベルダンディーは、投影映像の中でスヤスヤと寝息を立てる愛鈴を見て、目を細めた。
「……C2は、もうこの子の一部なのね」
 そして、起動プログラム
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