九十八 光あるほうへ
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う事を聞かせる材料が無くなったと内心口惜しく思っていたのだが、まさかシン本人が生きていたとは。
そこでようやく思い出す。
サイが絵を上手く描けるようになった要因を。
変化の達人で特に動物においては類を見ないほど上手く変化できていたシン。
弟の為に変化し、みるみるうちに卓越の域に達していった動物変化。
そんな動物に変化したシンをモデルにすることで、サイの画才がメキメキと上達していったことを。
つまり、目の前で散る鴉の羽根は────。
ダンゾウは思い出すのが遅かった。
サスケが幻術で生み出した鴉のふりをしてずっとシンが空中でダンゾウを観察していたことを。
そして機会を窺っていたことを。
「…やっとだ…」
ダンゾウの胸元に吸い込まれるようにクナイが突き刺さる。
貫通したソレを、ダンゾウは見下ろした。
顔を伏せていたシンがようやくダンゾウと眼を合わせる。
その相貌は、かつてサイと殺し合いをさせた幼き子どもの面影が確かにあった。
「弟を──サイを【根】から…おまえから解放してもらうぞ…──志村ダンゾウ…っ」
だがシンも遅かった。
既に【裏四象封印術】は発動している。
この術は術者の死をトリガーに、周囲を根こそぎ削り取って己の遺体に引き摺り込む道連れ封印術。
もはや止めるすべはない。
いくら術者本人を刺したところで、この術は止められない。故に目の前にいるシンが巻き込まれるのは確実。
ダンゾウは朦朧とする意識の片隅で、サイを見た。
墨の鳥で空中に避難していたサイは他の皆が引き留める中、シンを助けようと必死に手を伸ばしている。
墨の鳥をもう一羽【超獣戯画】で描き、五代目火影や他の面々を安全な空中に残してシンを助けようと此方へ向かおうとするのが見えた。
そんなことをすればサイとてシン同様無事では済まないのに。
ダンゾウはやおら瞼を閉ざした。
もはや痛覚が麻痺して痛みを感じなくなってきたダンゾウの脳裏には、かつての回想が鮮やかに蘇ってゆく。
そう…忘れたくても忘れられない、あの屈辱の日を。
「囲まれたな…」
遠い昔。
深い森の中、虫の音に掻き消されるほど息を潜め、静寂に溶け込む。
その中心で一際落ち着いているように見える彼は冷静に現状を分析していた。
「…敵は…二十…この追跡力からして雲隠れ…」
地に指を指し、足音を振動で把握する。
瞼を閉ざして敵の数を確認していた二代目火影を筆頭に、木ノ葉の忍び達は皆、息を切らしていた。
疲労困憊していた彼らは何れも二代目火影に指示を仰ぐ。
「敵はまだ
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