森に煌く刃
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られます」
「そうか、有り難う」
博士はそう言うと村雨に顔を向けた。
「行こう、四階だ」
二人はエレベーターで四階に上がった。
「彼なら大丈夫だ。必ず君の記憶を取り戻してくれるよ」
博士はエレベーターの中で村雨に言った。
「記憶・・・・・・。その人はそういったものの専門家なのか?」
村雨は博士に尋ねた。
「まあ専門といえばそうかな。何分色々とやっているからねえ」
「そうか」
彼は表情の無い顔で言った。博士はそれを見て彼に言った。
「記憶が戻ることがあまり嬉しくなさそうだね」
「そういうわけじゃないが。ただどうも実感が湧かない」
村雨はポツリ、と言った。
「俺はゼクロスとしてライダー達と戦った時からの記憶しかない。今の俺はその前どんな人間だったかを一切知らない。だが不思議なことにそれが苦しいとは思わない」
「そうか、・・・・・・そうだろうな」
博士はその言葉に頷いた。何処か寂しそうである。
「しかし君が人間となるには記憶を取り戻さなくてはならない。そして君がバダンと戦うライダーとなる為にも」
「そうか・・・・・・」
村雨はエレベーターの扉のほうを見ながら言った。その目は何かを考えている目であった。
「その記憶がどんなに辛く苦しくとも君は耐えると言った。人間になる為に。だがこのことだけは覚えてくれ」
「・・・・・・何だ」
村雨は博士のほうへ顔を向けた。
「これも前に言ったがたとえどんな記憶であっても憎しみに心を捉われてはならない。憎しみに心を支配されたら君はライダーではなく鬼になってしまう」
「鬼に・・・・・・」
鬼、それは博士から聞かされた。角を生やした異形の怪物で怪力を誇る凶暴で残忍な化け物だ。それはまるでバダンの改造人間のようであった。少なくとも村雨はそう感じた。
「いいか、これだけは忘れないでくれよ。憎しみだけは持たないでくれ」
「・・・・・・ああ」
だが博士はそう言いながらふと考えた。今までどのライダーも最初は憎しみに心を捉われていた。
(彼等も最初は憎しみからはじまった。しかし・・・・・・)
彼等はそれから愛を知り真の戦いに目覚めたのだ。
(彼ももしかすると・・・・・・)
しかし博士はその考えを脳裏から打ち消した。彼も憎しみの持つ恐ろしさ、醜さをよく知っているからだ。
四階に着いた。エレベーターの扉が開いた。
「行こう」
二人はエレベーターを出た。そして左に曲がる。
そこで白衣を着た若い男と擦れ違う。結城丈二だ。丁度今海堂博士の研究室から出たばかりである。
「んっ!?」
彼は村雨と擦れ違って何かを感じた。そして後ろを振り返る。
「あの男は・・・・・・」
村雨を見た。何処かで見たような気がした。
「いや、知らないな。気のせいか」
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