海魔泳ぐ海
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博士は車を運転しながら言った。
「そうか。博士の通っていた大学なのか」
「ああ。それからイギリスに留学したりしていたけどね。やっぱり僕の母校はあの大学さ」
彼は懐かしさに浸る顔で言った。
「・・・・・・嬉しそうだな」
村雨はそんな博士の横顔を見て言った。
「ああ。嬉しいさ。だって久し振りに母校に行くのだから」
「昔の事を多い出すのはそんなに嬉しいのか」
「うん。以前の楽しかった思い出だからね。勿論辛い事もあったけれど人は楽しい事のほうをよく憶えている。だからそれを思い出すのは楽しいんだ」
博士は目を細めて言った。
「そんなものか」
村雨は彼を見て言った。
「君も記憶を取り戻せばわかるよ。過去の持つ意味が」
博士は顔を真摯なものにして言った。
「過去があるから現在も未来もある。過去を知っているから人はそれを思い出し懐かしみ教訓に出来るんだ」
「そうなのか」
村雨にはその言葉の意味がよくわからなかった。彼は過去の一切の記憶を持たないからだ。
「村雨君」
博士はここで彼に対して言った。
「過去を受け入れる事が出来るか」
「?」
彼はその言葉の意味がわからなかった。
「君の過去は他の人とは違う。あまりにも過酷な過去だ。それでも君はそれが欲しいか」
「・・・・・・・・・」
村雨は自分の過去を知らない。だから博士が言っている意味も理解出来ない。だが博士が自分に重大で深刻な決断を迫っている事は理解出来た。
「それが君に激しい怒りや憎しみ、そして哀しみを与えようとも君は耐えられるか。そしてそれに心を奪われないでバダンと戦っていけるか」
「・・・・・・・・・」
その言葉の意味はわかった。彼は村雨が自らの記憶を知ることによりその心を負の感情で支配される事を恐れているのだ。
「・・・・・・それはよくわからない」
村雨は答えた。
「怒りは知っている。だが憎しみも哀しみも知らない。俺はその二つの感情がどういったものなのかは知らない。だが博士の口調からするとそれはあまりいい感情ではないようだな」
「・・・・・・少なくとも憎しみはね。それに捉われていたライダー達も多かったが」
「・・・・・・そうか。ライダー達はその感情を知っているのか」
かって両親と妹を殺された風見志郎、陥れられ右腕を自分を慕う部下達を失った結城丈二、父を殺された神敬介、自分を育ててくれたバゴーを殺されたアマゾン、友を殺された城茂、自らの夢を壊された沖一也、誰もがそうであった。本郷猛や一文字隼人もショッカーのエゴにより自らを人でないものに変えられている。筑波洋も友を殺されている。彼等も最初は憎悪に心を支配されていたのだ。
「しかし彼等はそれを克服した。そして本当の意味での正義の戦士になっ
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