雪原の花
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べて言った。
「それが貴様等に解かるとは思わんが。せめてこの俺の手で貴様等を葬ってやる」
風見はそう言うと間合いをジリジリと詰めてきた。
「・・・・・・・・・」
バラロイドもそれに一歩も引かない。身じろぎもせず風見を睨みつけている。
左腕を振り上げた。薔薇の花を投げ付けて来た。
「ムッ」
風見はそれを横にかわした。薔薇はテーブルに当たった。
するとテーブルは白い煙を発して溶けていった。どうやら薔薇には恐ろしい毒か何かがあるらしい。
「よく今のをかわしたわね。当たっていればそれでお終いだったのに」
「ほざけ。これしきの事で俺が死ぬとでも言うのか」
「それはすぐに解かるわ。嫌でもね」
バラロイドはそう言うとニヤリ、と笑った。
「この場は退いてあげるわ。けれど憶えておくことね。貴方はこの薔薇に溶かされ死んでいくのだと」
バラロイドの周りを無数の花びらが取り囲んだ。
「待てっ!」
追いすがろうとする。だがバラロイドはそれより速く姿を消した。後には黒い薔薇の花びらだけが残った。
「消えたか」
風見はその花びらを見ながら言った。後ろから佐久間が来た。
「先輩、その花は」
彼はしゃがみ込みそれを手に取ろうとする。だが風見はそれを制止した。
「待て、これはかなり危険だ」
「えっ!?」
佐久間はその声に思わず指を止めた。
「さっきあの女が投げた薔薇はテーブルを溶かした。恐らく強力な毒があるのだろう」
「毒、この花に・・・・・・」
佐久間は退いた。
「その証拠に・・・・・・見ろ」
花びらが落ちた場所を指差す。そこでは床やテーブルがドス黒く変色していた。
「そんな、花びらが・・・・・・」
「植物の改造人間には毒を持った者も多い。奴はそのうちの一人だ」
「毒を持った改造人間・・・・・・」
佐久間は戦慄を覚えた。そうした改造人間ともこれまで幾度と無く戦ってきた。何れも厄介な相手であった。
「奴等はこの小樽で毒ガスの実験をしていると言っていた。もしそれが本当ならば完成した時大変な事になる。それだけは断じて許さん」
「ええ、勿論ですよ」
二人は意を決した顔で言った。そしてそのホールを後にした。
バラロイドはこのホテルにダンサーというふれこみで滞在していたらしい。本場スペインから来た本格的なフラメンコのダンサーだったという。
「それが何故バダンに・・・・・・」
「経歴を偽造したのだろう。奴等ならばたやすい事だ」
風見は佐久間に対し言った。
ホテルに確かめたところダンサー達は何処かへ去ったという。滞在費とホールの弁償代を銀行に振り込んだ後で。
「変なところで義理堅い奴等だな」
「それが奴の流儀なのだろう。ところで銀行の振込
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