雪原の花
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風見はその美しさに見惚れるわけでもなくただその女を見ていた。食事も止め席に座して見ている。
何時しか他の客は何処かへ去っていた。コックやウェイトレスも消えていた。
踊りはそれでも続く。不意に女が口に咥えていた薔薇を手に取った。黒い薔薇である。
女はそれを投げた。それは一直線に風見へ飛んで来た。
風見はそれをナイフで撃ち落とした。それと同時に楽器を演奏していた者達が楽器を放り投げた。
男達は変身した。やはりバダンの戦闘員達だった。
「やはりな」
風見はそれを見て冷静に呟いた。そして席を立った。
佐久間もだ。二人はテーブルを飛び越えてこちらに来る戦闘員達に向かって行った。
戦いが始まった。戦闘員達は椅子や皿を投げ風見達に攻撃を
加える。
風見達はそれに対し懐からナイフを放った。それは一発も外す事なく戦闘員達の喉を貫いた。
「ウフフフフフフ、噂通り腕前ね」
女はそれを見て微笑みながら言った。
「言ってくれるな、バダンの魔人共が」
風見は接近してきた戦闘員を肘で倒しながら言った。
「あら、何故怒るの。褒めてあげたのに」
「貴様等に褒められても嬉しくはない。俺は貴様等を倒す事が全てなのだからな」
風見は女を見据えて言った。
「あら、言ってくれるわね。折角食事と催しに招待してあげたのに」
「それは俺を倒す為にだろう。違わないか」
「ウフフフフフ、その通りよ」
女は目を赤く光らせて言った。
「私はバダンの改造人間の一人バラロイド。この地の作戦の責任者よ」
「バラロイドか。憶えておこう。言え、この小樽で何をしている」
「聞きたいかしら」
「無論だ。一体何が目的だ。この小樽をどうするつもりだ」
「ちょっと実験をしているの」
バラロイドは妖艶に微笑んで言った。
「実験?」
「そうよ。新たなる毒ガスのね」
「毒ガス・・・・・・」
その言葉に風見の顔色が変わった。毒ガスの恐ろしさは彼も良く知っている。
「サリンなぞ比較にならない程の素晴らしい力を持った毒ガス。それを今開発して試しているのよ」
「そうか、行方不明者は貴様等の仕業だったのか」
「そうよ。骨まで溶かしてしまう素晴らしい力なのよ」
バラロイドの顔が自信と殺意に満ちたものになった。その整った顔が地獄の魔物の様に歪んで見えた。
「このガスが完成した時我がバダンの野望はさらに前進するわ。そして愚かな人間共を全て溶かしてやるの」
「愚かか。その言葉そのまま貴様等に返してやろう」
「何ですって!?」
バラロイドはその言葉に反応した。顔がキッと歪む。
「かっては人でありながら人を見下し愚弄するその姿。愚かと言わずして何と言う」
風見はあえて余裕に満ちた笑みを浮か
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