策謀編
第百十一話 可能性
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宇宙?796年11月15日14:00
バーラト星系、ハイネセン、自由惑星同盟、自由惑星同盟軍、ハイネセンポリス郊外、技術科学本部ビル、
ヤン・ウェンリー
同盟軍内部の組織として、三つの本部と十二の部局がある。まず最上位に位置し軍令を司る統合作戦本部。補給、後方支援を掌握する後方勤務本部。軍事技術の開発、艦艇の建造、設計を担う技術科学本部。そしてその三本部の下に防衛・査閲・経理・情報・人事・装備・教育・施設・衛生・通信・戦略の各部局がそれぞれ存在している。今、私がウィンチェスターと共に訪れているのは技術科学本部だ。十二部局のうち、掌握しているのは装備部のみ、三本部の中では一番影が薄いと思われている組織だ。
「しかし、本当に実現可能なのかい?」
「可能とは思いますよ。無理だったら他の手を考えるだけです」
「他の手をねえ…あるのかい?」
「さあ…」
ここに訪れた理由は、ウィンチェスターの先日の発言だった。
〜イゼルローン要塞をハーンに運びます〜
いやあ、壮大稀有というか、空いた口が塞がらないというか…ウィンチェスターの思いつきは想像の斜め上を行く。
『イゼルローン要塞に十二個の航行用エンジンを取り付け、ワープと通常航行でハーンまで移動させて同地の防衛の要とする』と言うのだが…。
今の技術科学本部長はバウンスゴール大将、艦隊司令官としても優秀だが、元々は技術畑の人で、実戦に即した艦艇ユニット設計をする事で知られている。序列も当然ウィンチェスターより上だ。だからこそ三本部長の一人でもあるのだが、軍内部現実的な格付としては宇宙艦隊の下に位置しているから、宇宙艦隊副司令長官の要請という事で司令部に来て貰ってもよかったらしい。だが、『年下の大将や中将に呼びつけられて、いい気分でいられます?お願い事をするのはこっちなんですから、こっちから出向きますよ』という事で、応接室で技術科学本部長を待っている、という訳だ。
「お待たせして申し訳ない。戦艦の艦首ブロックの試験に付き合っておりましたのでな…で、今日の用向きは…?」
内容が伝わっていないのか?…ああ、情報漏洩を避ける為か。そうだとしても内容が内容だ、前情報もなくいきなり話をして大丈夫なのだろうか?
「今日の用向きはとりあえず置いといて、折角ですからその試験中の艦首ブロックを拝見したいのですが。どうです、ヤン提督」
「…そうですね、宜しければ見せていただけませんか」
バウンスゴール大将は目を輝かせて、こちらへ、と我々の先導についた。艦艇装備試験室、という部屋というよりは旗艦戦艦がまるまる一隻入りそうな倉庫に案内された。少々お待ち下さい、そう言うとバウンスゴール大将は試験室の中へ消えて行った。
「ウィンチェスター、君は人をおだてるのが上手いね」
「技術科学本部長
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