策謀編
第百十一話 可能性
[2/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
という肩書になってまで試験に付き合うなんて、根っからの技術屋さんじゃないですか。そういった人に頼み事をするのなら、現場の空気感ってやつがあった方がいいと思いまして。それに」
「それに?」
「私こう見えても『宇宙の艦船』の愛読者なんですよ」
「……」
案内された試験室には、一隻の標準戦艦のモックアップが置かれていた。艦型は普通の標準戦艦だが、艦首部分が異なっている。どうやらこの原寸大の模型は各部のユニットが付け変えられる様になっている様だ。ウィンチェスターが子供の様にはしゃいでいる…。
「ヤン提督、見て下さいよ、艦首部が大きくなって主砲が縦に五門の四列、二十門もありますよ…バウンスゴール大将、これはムフウエセの艦首ブロックの発展型ですか?」
「ムフウエセ…よくご存知ですな。いえ、発展型ではありません。むしろ原点回帰です。あの艦に取り着けた武装ユニットは少々バランスが悪いのです。旋回時の慣性モーメントの制御に難がありまして…ブロックを装着してみたところ、あちこちといじくりまわさなくてはならないという本末転倒な結果になりまして」
「そうなんですか…あの艦首形状、シュモクザメみたいで格好いいんですけどね」
「お褒めいただきありがとうございます…話を戻しますと、旗艦戦艦用の艦首ブロックを参考に小型化、シンプルな形に戻したのです。結果、ムフウエセの十八門から二十門に増やす事が出来たのです。ですが…」
「何か問題が?」
「全力斉射時の戦闘継続時間に問題が発生しまして。射撃管制にも電算機の容量を食いますし…まあ、元の二倍以上の門数なので当たり前といえば当たり前なのですが」
「となると、使用する状況が限定されるという訳ですね」
「はい。元々は標準戦艦に旗艦戦艦の役割を充てられないか、というオーダーから生まれたものですから…戦況が劣勢ならともかく、現状ではあまり必要性を感じないのも確かなのです」
「しかし、可能性の追及を止める事は出来ない、そういう事ですね」
「はい。ご理解が早くてありがたい限りです」
標準戦艦を旗艦戦艦の代替艦として使う…現状では余程の大敗を喫しない限り、そういった事態は訪れないだろう。標準戦艦は元々指揮機能を持っていない。改造を施しても小規模な分艦隊の指揮にしか使えない。だったら旗艦級戦艦を作ればいいじゃないかという話なのだが、旗艦級戦艦は標準戦艦に比べて工数が倍以上かかるのだ。当然時間がかかる。この艦首ブロックはそういった暇がない時…急速に艦艇数を揃えなくてはならない時の為の物だろう。想定される使用状況は…圧倒的に不利な状況下での正規部隊による奇襲やゲリラ戦術といったところだろうか…。
「いやあ、いいものを見せて貰いました。ありがとうございます」
「そう言って頂けると案内した甲斐があったというものです…ところで、ご用
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ