火吹き竜の島
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る。ライダー達もそれで皆苦労してきたからな」
「そうか、ライダー達は怒りに心を捉われていたのか」
村雨は考えるように言った。博士はその言葉に頷いた。
「そうだな。彼等の中にはそうだった者も少なくはない」
博士は村雨の目を見ながら言った。そう言いながら思った。何れ彼も怒りに包まれるのではないか、と。
それは深刻な危惧だった。彼が自分の姉の死の真相を知った時どうなるか、それが恐ろしかった。
だがそれも時が来たら彼に話すつもりである。今はその時でないだけだ。
「だがそれはかっての話だ。今の彼等は違う」
「違う・・・・・・。それでは今はどうなのだ」
村雨は尋ねた。
「今も怒りを持っている。だがそれよりももっと大きなものを常に心に持っている」
「それは何だ?」
「それは『愛』だ」
博士は自身に満ちた声で言った。
「愛・・・・・・」
村雨にとって初めて聞く言葉だった。彼はそれが何かよく解からなかった。
「何だそれは・・・・・・・・・」
彼は博士に尋ねた。博士はそれに対し難しい顔をした。
「難しい言葉だ。一言では言えない。だが凄く簡単に言うと・・・・・・そうだなあ」
博士は思案しながら言葉を出した。
「人を思いやる気持ち、人を大切にする気持ちかな」
「人を思いやり、大切にする気持ちか」
村雨はその言葉を繰り返した。
「まあ他にも色んな意味を持っているけれどね。だがこれだけは憶えていて欲しい。愛がなければ人ではないんだ」
博士は村雨の心に直接語りかけるように言った。
それはまだ村雨の心を動かすには至らなかった。だが彼の心に強く残った。
「愛がなければ人ではない・・・・・・・・・」
村雨は呟いた。
「そうだ、人は愛を知るから人である。例えその身がどんなものであろうともな」
「身体がどんなものであっても・・・・・・。それでは俺も人でいられるのだな」
「勿論だ。愛を知っているならばな」
博士は言葉を選んで言った。彼の機械の身体と感情を奪われた心を察して。
「・・・・・・そうなのか。俺も愛を心の中に持つ事が出来たら人になれるのか。今の俺は人間ではないのか」
「そうは言っていない。君は既に人間だ。たとえ機械の身体でもな」
「・・・・・・・・・」
博士の言葉の意味が理解出来なかった。彼は沈黙した。
「だが愛を知った時本当の意味での人になれる。そして悪に打ち勝てるのだ」
「悪に打ち勝つ・・・・・・。愛とはそんなに強いものなのか」
「ああ、この世で最も強く、素晴らしいものだ」
博士は言い切った。村雨は彼の眼を見た。曇りの無い眼だった。
「そうか。そうなら是非知りたい。そして本当の意味での人になりたい。・・・・・・博士、それを教えて
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