第3部
オリビアの岬〜海賊の家
オリビアの岬
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船員のところには、俺達が向かう」
「し、しかし……」
すると、どこからともなく女の人の歌声が聞こえてきた。船上にいる女性は船員含めて私とシーラだけなので、それ以外の誰かが歌っていることになる。
「何!? この歌!!」
悲しげに、それでいて儚げに歌うその歌声は、潮騒の中でも随分とはっきり聞こえてくる。船上にいる誰もが聞こえるその声量は、到底人が出せるようなものではなかった。
「一体どうなってんだよ!!」
常に警戒を怠らないナギも、この怪奇現象に戸惑いを隠しきれないでいる。かく言う私も船員たちの怯えようを間近に見て、本当に幽霊の仕業なのかもしれないと、恐々と辺りを見回すので精一杯であった。
「うあああ、もうだめだ!!」
そんな中、操舵手のウォルトさんが恐怖に耐えかねて逃げ出してしまった。それをきっかけに、一人、二人と船員たちがどんどん持ち場を離れていく。
「皆、抜けた奴らの持ち場に回れ!!」
ユウリが大声で私たちに向かって命令した。正直私もここから逃げ出したかったが、シーラですら緩みかかった帆を張るためにマスト下でロープを引っ張ろうとしている。しっかりしなくちゃと、私は頬を叩いて気持ちを引き締めた。
シーラとルークは風で撓んだ帆を張り直し、ナギはラスマンさんと一緒に見張り台に登り、『鷹の目』を使って周囲を巡らせている。ヒックスさんは逃げ出したウォルトさんの代わりに操舵室に向かっていった。そして私とユウリは、なかなか進まない船を動かすために、他の船員さんたちと一緒に櫂を漕ぐことにした。
それでも歌声はなおも続いている。恋人に会いたいのに、会えない。絶望を抱きつつも、私はここでずっと彼に会うのを待ち侘びている。そんな内容の歌詞だった。けれど聞いているうちに、彼女の悲痛な思いと自分を重ねてしまう。それは他の皆も同じで、いつしか私の前で櫂を漕ぐ船員が鼻をすすり始めた。
「ううっ、なんて辛い歌なんだ……。おれも死のう……」
すると、櫂を漕いでいた船員の一人が泣きながら櫂を離し、そのまま海に飛び込もうとしたではないか。
「うわあっ!! 待ってください!! 落ちちゃいますよ!!」
私は慌てて彼を引き止める。けれどその目は虚ろで、悲しみに満ちていた。
――皆がおかしくなってるのは、この歌のせい!?
「すみません、オレが悪かったです!! だからもうぶったりしないでください!!」
「あの人にあんなふうに言われたら、もう死ぬしかない……」
「もう、辛いです……。おれたちを解放してください……」
すでに何人かの船員が歌を聞いて心を病んでしまったのか錯乱状態になり、さらには海に身を投げようとする人まで出てきてしまった。
すると、ルークと
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