暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
最終章 卒業後……
誤解と嫉妬 A
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「いやあ、珠莉ちゃんには話しにくくてさ。珠莉ちゃんとは将来、結婚も考えてるけど。あっちの家柄すげえじゃん? だから何か、仕事辞めたいって言うのもみっともないっつうか、男としてのプライドが邪魔して」
「プライドって……。そんなこと言ってる場合じゃないでしょ? 大事なことじゃない。本気で珠莉ちゃんと結婚したいって思ってるなら、なおさらちゃんと話さないとダメだよ。それに、こういうことしてたら珠莉ちゃんにわたしとのこと誤解されちゃうし」
「それは……困るよなぁ」
治樹さんが眉根を寄せて頬をポリポリ掻く。
愛美だって、三年かかって親友になれた珠莉に嫉妬されて、関係がギクシャクしてしまうのはイヤだ。それに、純也さんから誤解されるのもイヤなのだ。治樹さんは愛美にとって親友の兄であり、兄のような存在でしかないのだから。
「うん。だからね、ちゃんと珠莉ちゃんにも話した方がいいと思うな。結婚まで考えてるなら、珠莉ちゃんにも無関係な話じゃないんだし」
「だよなあ。……分かったよ、ここは愛美ちゃんのアドバイスどおりにするかな」
「それがいいよ」
愛美はとりあえずホッとひと安心して、レモンティーを飲んでいたけれど。大きな窓の外に見慣れた車を見つけて、驚いて思わず二度見してしまう。
(あの車は純也さんの……。でも、どうして彼がこの町に?)
「愛美ちゃん、どうかした?」
「あ……、ううん。ちょっとね、知り合いの車が見えた気がして」
「もしかして彼氏? 珠莉ちゃんの叔父さんだっけ」
「うん……、まあ……そんなところ」
今日、彼が横浜に来るなんて、愛美には一言も連絡してきていなかったはずなのに。どうして彼がここに来ているんだろう?
(……そういえばわたし、午後から一回もスマホ見てないかも)
スマホのロックを解除すると、純也さんからのメッセージの通知が一件入っていた。
『愛美ちゃん、俺、今日一日予定が空いたんだけど。
今から会いに行っていいかな?』
「…………マジで?」
純也さんは愛美からの返信を待たずに、横浜まで車を飛ばしてきたらしい。
(純也さん……! サプライズで会いに来たかった気持ちは分からなくもないけど、せめてわたしが返事するまで待とうよ……。こっちにも都合ってものがあるんだから)
愛美は頭を抱えた後、ふとあることに気がついた。彼はもしかしたら、愛美が治樹さんと一緒にこのファミレスで食事をしているところを見ていたかもしれない。それをもし「浮気している」と誤解されたら……。
「……愛美ちゃん?」
「治樹さん、ゴメンなさい! わたし、ちょっと用事を思い出したから先に出るね! お会計は済ませておくから、治樹さんはゆっくりしていって!
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