第一章
[2]次話
内臓を壊す位には
浅井義家はお笑い芸人である、ひょっとこを思わせる顔で背は一七六ありやや太っていて黒髪は少し剽軽な感じにセットしている。元々落語家でそちらの活動も熱心だがテレビに出ては人を全力で笑わせることを論外としている。
趣味は酒である、その為仕事が終わるとよく飲みに行くが。
この日彼は仕事が終わってだ、こう言った。
「今日はまっすぐ家に帰るわ」
「あれっ、飲まないんですか？」
「今日は」
「そうなんですか？」
「休肝日や」
後輩達に笑って話した。
「それでや」
「ああ、飲み過ぎない様に」
「気を付けてるんですね」
「最近毎晩飲んでるさかいな」
だからだというのだ。
「そうするわ」
「そうしますか」
「ほなですね」
「今夜はこれで」
「さよならや」
笑って言ってだった。
浅井芸名は春雨亭治五郎は家に帰った、家に帰ると幼馴染の妻の明子小柄で丸顔で黒髪を後ろで団子にしている丸い目と大きな耳を持つ彼女に言った。
「もう今日は番飯食うて風呂入って寝るわ」
「飲まないって連絡受けたからあなたの分も置いておいたわ」
妻は彼に言った。
「子供達の分も作ってね」
「そうしてくれたんやな」
「ええ、けれどずっと何日かに一回は飲まない日作ってるわね」
「仕事帰りでもな」
「お仕事ない日は飲まないし」
そうした日はというのだ。
「お仕事終わってからって決めていて」
「それでも飲まへん日もあってな」
「定期的にそうしているわね」
「さもないとな」
浅井は妻に言った。
「身体、内臓壊すやろ」
「肝臓や腎臓をね」
「そうなったら飲めへんし」
その酒をというのだ。
「大好きな酒をな」
「だから飲まない日もあるのね」
「それも結構多くな」
「もうけてるのね」
「ああ、そしてな」
そのうえでというのだ。
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