第三部 1979年
新元素争奪戦
硝煙 その2
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認識した。
「同志諸君、逃げろ!」
チェチェン人の副官に、隊員の多くは蜘蛛の子を散らすように走り出した。
チェチェン人の男は振り向かずに必死に走った。
KGBの面々も、それに続こうとした。
だが、マサキが立ちはだかった。
マサキは次元連結砲を繰り出し、チェチェン人の副官の五体を粉砕した。
アルファ部隊は逃げる間もなくマサキに追いつかれ、一網打尽にされた。
爆発光が煌めき、黒煙が躍り出る。
炎はたちまち燃え広がり、機関砲を搭載したトラックを焼き尽くしていく。
ゼオライマーはそれを確認すると、滑走路に向かって歩き出した。
そして滑走路の端に到着すると立ち止まり、空を見上げる。
「さて……」
マサキは呟くように言った。
「どうしたものかな」
マサキは少し思案すると、ゼオライマーのレバーを操作する。
背面のスラスターから圧縮された熱風が噴出され、機体は空に向かって跳躍した。
札幌市南区にある真駒内基地に置かれている第11師団司令部の作戦室へ事件が伝わったのは、9月8日の午後2時だった。
「函館空港にて、200名以上の武装集団による急襲を受けり。
敵の正体は、おそらくソ連軍のコマンド部隊と推定される。
我が方の損害は、1345時点で、死者30名、負傷者77名。
空港も著しく破壊され、空港前派出所とターミナルビルは倒壊。
航空機10機とヘリコプター8機が大破。その他民間機にも多数損害有り。
1400」
通信参謀の報告が報告を読み上げると、会議室は沈黙に包まれた。
基地司令を兼任する副師団長も、師団参謀長も身じろぎをしない。
他の参謀や幕僚も、何を発していいかわからない様子で、視線を宙に回している。
最悪の事態を前に、誰もが戸惑いを隠せなかった様子だ。
「ソ連政府部内で何かがあった可能性は?」
沈黙を破って、師団長が口を開いた。
「ソ連での政変ですか」
「そうだ」
基地司令の問いに、師団長は答えた。
「現状のソ連赤軍では外征をする余裕はない。
いわんや、渡海作戦をしてまで、飛行機一台を奪還する価値があるとは思えない。
とすると、彼らの目的は新型の輸送機ではなく、亡命した参謀総長と彼の副官の抹殺だろう」
師団長は言葉を切ると、タバコに火をつけた。
「56年のハンガリア事件にしても、68年のチェコ事件、69年の中ソ対立にしても外交的な前兆があった。
共産党同士のイデオロギー論争と外交方針を巡ってのものだ。
1920年代のアフガン介入の時もそうだった。
だが、今回はそのような前兆は見られない」
函館空港での爆発があったとの報告を受けた時、ソ連軍の攻撃を考え、オートバイによる偵察隊を出すという結論を出したばかりだった。
たった今の報告は、それを裏付けるものだ。
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