第三部 1979年
新元素争奪戦
硝煙 その2
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「再びロケット砲を撃ってくる可能性もある。
警戒しろ」
「同志大佐、それは考え過ぎでは?
あのRPGは、既に弾切れのはず。
奴らに攻撃手段は残されていません」
チェチェン人の副官は、少し気色ばんで言う。
「いや、念の為だ」
KGB大佐は、トラックが滑走路に到達するまで油断はしなかった。
だが、その心配も杞憂に終わった。
トラックが滑走路に進入したにも関わらず、対戦車砲の射程に入っても、沈黙を守っていたからだ。
滑走路の脇の草むらは乾燥していて、土煙が僅かに立つ程度である。
トラックのタイヤが路面を噛み砕いても、不快音は一切しなかった。
AK74を身構えるアルファ部隊の面々から、安堵感が伝わってくる。
「同志大佐、大丈夫です」
副官のチェチェン人が胸を撫で下ろしながら言う。
「よし」
チェチェン人の言に、KGB大佐は不敵の笑みを漏らす。
「あのロケット砲の弾は切れている。もう動かないだろう」
「ええ、そのようです」
AK74を構えたアルファ部隊の隊員達は、一斉に荷台から飛び降りた。
格納庫に銃口を向けるが、撃ち返して来る様子もない。
「突撃!」
大佐が声をかけるよりも早く、チェチェン人大尉は運転席から飛び降りた。
「射撃開始!!」
KGB大佐が叫ぶのと同時に、トラックの荷台に積まれていた対空機関砲が一斉に火を噴いた。
函館中央署から応援に来た機動隊の隊員達は、一斉に盾を構える。
対空機関砲の弾丸は、ジュラルミン製の楯を貫き、彼らの五体を粉砕し、骨を砕いた。
一面が朱に染まり、凄惨な地獄絵図が広がる。
だがKGB大佐は、安心できなかった。
マサキの死体を見るまで、この戦いは勝ちではない……
大佐がそう考えた瞬間、空港の滑走路の一角にマグネシウムを炊いたような閃光が走る。
眼前に音もなく、白亜の巨人機が現れた。
全高は、およそ50メートル強。
戦術機2機を重ねたよりも大きい。
KGB大佐は束の間、恐怖に身を震わせた。
彼の目の前には、ソ連赤軍の第一親衛戦車師団を壊滅させた、あの憎きゼオライマーがいたからだ。
「化け物め!」
KGB大佐は吐き捨てるように言うと、トラックの運転席に飛び乗った。
そしてアクセルを踏み込み、急発進させる。
マサキは、突っ込んでくるトラックに向けて、ゼオライマーの右腕を伸ばす。
トラックの加速が十分でないのを確認すると、次元連結砲をトラックに発射した。
その瞬間、フロントガラスは割れ、エンジンは爆発した。
「何を!」
爆発と同時にトラックは大きく揺れ、車体にガソリンが降り注ぐ。
KGB大佐の全身は、燃えるたいまつになり、間もなくトラックは爆発した。
副官のKGB大尉は、直ぐに現状を
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