第三部 1979年
新元素争奪戦
硝煙 その1
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旧式のダットサンが喘ぐようにして、濃茶色の排気煙を後方に流しながら登坂していく。
速度は精々40キロほどだろうか。
5台続くトラックの荷台には、それぞれソ連製の対空機関砲が積んである。
車列の真ん中の三代目の車両の助手席は、白樺迷彩の戦闘服に身を包んだKGB大佐が座っている。
先頭だとロケット弾や機関銃の標的になり、最後尾だと退路を断つために狙われる可能性があるからだ。
「同志大尉、滑走路を先に抑えよう」
KGB大佐は、脇にいる副官のチェチェン人の大尉に話しかけた。
「もしかすると、これは罠かもしれませんね」
チェチェン人の男は疑心暗鬼にかかっており、そんな事を言う始末である。
KGBのアルファ部隊は、木原マサキの為に既に200名近い損失を受けており、そのショックは大きかった。
「そうかもしれない。
だが、恐れていては何も始まらない」
「ええ……」
チェチェン人は、少しばかり気弱な返事をする。
「参謀総長は既に50の大台を超えている。そんな老いぼれとESPの女を連れては、さほどは動けまい」
「あの日本野郎は……今後、どうするつもりでしょうか」
「単純に考えれば、あの飛行機を操縦して、本土に持っていくのだろう」
トラックは滑走路まで200メートル足らずとなり、皆に緊張感が走る。
AK74の銃把を握りしめたり、示す態度は千差万別である。
1979年当時の函館空港は、2500メートルの国内線限定の民用空港だった。
元々は1200メートルだったが、71年に700メートル、78年に500メートルと延長され、現在の形になった。
民用空港の建前なので、軍の警備隊はおらず、空港警備派出所しかなく、武装も軽微なものだった。
敵のヘリボーン奇襲を受ければ、即座に空港機能は停止し、降伏せざるを得ないだろう。
マサキは疑心暗鬼になった。
もし実戦経験豊富なソ連のスペツナズに襲われたら、北海道警では不安だった。
何しろ、機動隊の訓練を受けていないものが多く、頭数をそろえるのを優先したからだ。
そう思ったマサキが、喫煙所から格納庫に向かう際、鈍い爆音が聞こえた。
突然、閃光が走り、ほとんど同時に衝撃はと大音響が襲う。
ポリウレタン製の耳栓をしているのに、一瞬鼓膜が破れたかと思うほどだった。
視線を投げると、滑走路に留まっている旅客機やヘリが、断続的に攻撃されている。
82ミリ榴弾が滑走路の近くに落下するが、密生した下草の為に本来の威力を発揮できなかった。
ただし小規模な火災は生じさせている。
その弾雨の中で、炎上している旅客機が、何かの拍子で後方に下がっていく。
駐機している際に攻撃を受け、ギアを後方に入れたまま、操縦士が脱出した為である。
そして止めてある別な旅
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