白き極光編
第1章
エラディケイション・ザ・ドマ
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それに倣って彼の視線を追った。
「…? 水の…川の色が…?」
川が、そして城内へ張られた水路が七色に変質し始めたのだ。
同時に、城の廊下から大声が聞こえ始めた。
「全員水に触れるなっ!! 水場から離れるんだっっ!!」
「あの声はシルバーカラス殿…?」
「!! カイエン殿! あれを!」
シルバーカラスの声に反応して城内へ目を向けたカイエンの背に、ドマ兵が叫んだ。
指し示した指の先では、水路の脇を巡回していた別のドマ兵が突然倒れ込み、全身を掻きむしりながらもがき、やがて身動ぎ1つしなくなっていた。
「…! もしや毒!?」
「ど、毒ですと!? ひ、卑劣なっ!」
「鼻と口を押さえろ! 屋内へ入れっ!! っ! カイエン=サン! 毒だ!」
警告の声を上げながら城内を走り回っていたシルバーカラスが、カイエン達の姿を認めて駆け寄る。
このニンジャがここまで取り乱す姿は初めて見た。
メンポのガスマスク機能をONにしているらしく、僅かな駆動音がする。
「揮発した水蒸気すら有害だ! とにかく城の中へ!!」
「しょ、承知した! …はっ! 陛下…!」
口元に手拭いを巻いたカイエンは、真っ直ぐに王座へと走った。
城の至る所に水路が張り巡らされていた事が仇となり、既に城内にも悶え苦しむ者や、物言わぬ骸となった者が倒れ伏していた。
「陛下っ!!」
扉を開け放つと、玉座からそのまま倒れ込んだかのようにドマ王がうつ伏せになっていた。
「陛下! 陛下っ!!」
カイエンは敬愛する王を抱えて助け起こす。
「…おぉ…その、声は…カイエン…か…? すまぬ…目が…もう…ゴホッ…うむむ…帝国、めぇ…!」
口の端から血を垂れ流した王は、もはやその動作すら億劫であるかのようにカイエンへ手を伸ばす。
「カ、カイエン…私はもう…ダメ、だ…お主の…お主の…家族の…元へ…! 走れ…!」
もはや子供ほどの力も出せぬ腕でカイエンの身体を押し、そのまま息絶えてしまった。
「へ、陛下…くっ…!」
最期の瞬間まで家臣を案じてくれた主君へ頭を下げたカイエンは、その遺命通り、近くに部屋を与えられていた自身の妻子の元へと急いだ。
「ミナ! シュン!」
蹴破るかの如き勢いでカイエンは部屋へ飛び込む。
だが。
「…っ!! そ……そん…な……」
何かに足首を掴まれたかのような重い足取りでカイエンは歩を進める。
身体は左右へ大きくぶれ、視界が揺れる。
「…ミナ…」
喉に両手を添えたまま床に横たわる妻。
「…シュン…」
ベッドに眠ったままの息子。
だが、本来上下に動いているべき胸は静止したままだった。
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