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機動戦士ガンダム0086/ティターンズロア
第二部 黒いガンダム
第五章 ライラ・ミラ・ライラ
第四節 闖入 第五話
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 カミーユから見て、ライラとレコアの戦闘は、熟練者同士の戦いであり、千日手の様相を呈していた。カミーユと二人の間には厳然とした経験の差が横たわっており、つけ入る隙はない。だが、カミーユもただ傍観していた訳ではなかった。どうにかして介入する機会を狙い、タイミングと手段を図りながら逸る自分を抑えている。

 介入するにも、ビームライフルではレコアを巻き添えにする危険性が高い。かといって、カミーユの位置からはビームサーベルの間合いには遠すぎた。その上、間合いを詰めるために接近すれば二機の戦闘に捲き込まれるか、レコアの邪魔になってしまう。今はただ、牽制の光弾を放つ以外に為す術はなかった。

 レコアからみれば、カミーユは多少勘が鋭いだけの青年であり、しかも新兵である。カミーユにはライラとの戦闘に介入せず、離脱して欲しかった。現状、ライラとレコアの力は互角だ。カミーユさえ離脱してくれれば、レコアも戦闘をきりあげて離脱できる。追撃されるであろうが、歴然とした力の差がそれほどないということは、互いに決定打に欠くということである。下手を打たない限り、殺られることはない。

 だからこそ、何故自分よりエマの救援に行かないのかと叱声を落としたいほどだった。今カミーユの援護を必要としているのはレコアではなく、エマである。それに、カミーユが普通に動けるのなら、エマの救援に向かえば、必ずライラの注意を引く。そうすれば、ライラにつけ入る隙が生じるかも知れない。そうならないにしても、エマと二人で残りの二機の内、一機でも撃墜してくれれば、状況は大きく変わる。

 けれども、敵を目の前にして、カミーユは頭に血が昇ってしまっているようだった。経験の浅さというよりも若さから、離脱を卑怯者や臆病者と考えてしまうのだろう。一義的にはそう見えなくもないが、それは、考え違いでしかない。俯瞰して大局を見渡せなくなり、狭窄して眼前の敵しか見られないのは匹夫の勇に等しいからだ。

 現実、ライラの《カスタム》に立ち塞がれて、カミーユが救援に向かいにくかったということも少しはあったであろうが、カミーユの戦術眼に抜きん出たものがないということでもあった。操縦技術だけが優れていても、それが禍する場面もあるということだ。

 鎬を削り合いながら、上になり下になりしていたライラの動きが、少しずつ大きくなっていた。徐々にレコアも機体の回避運動がワンパターンになり勝ちだった。鍔競り合いから蹴りを連続で繰り出したライラは、その勢いのまま、ビームサーベルを振りかぶった。クリーンヒットしたレコア機がライラ機から離れた。

――チャンスだっ

 カミーユは千載一遇のタイミングとばかりに機体を二機の間に割り込ませる。《ガンダム》のバックパックから四つの光が放たれた。全てのスラスターを同時に噴かし、最大
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