第二部 黒いガンダム
第五章 ライラ・ミラ・ライラ
第四節 闖入 第四話
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た稀有な例である。その独特な機動は、フレキシブルに可動するバインダーによって生み出されていた。
例えば螺旋運動一つにしても、《カスタム》では熟練者しかできない正円運動を素早く短い距離で行える。だが、AMBACの多様化がパイロットを選ぶ機体にしてしまった。さらに言えばツィマッド社製のため、ジオン上がりのパイロットでないと扱いきれなかった。つまり、レコアにとっては扱いやすい機体だった。
「なんだ、この機体は……?」
ライラにとっては、《ガンダム》よりもこの《リックディアス》の方が脅威だった。明らかに敵パイロットが乗り慣れているように感じたからだ。戦闘では、敵がニュータイプでもない限り、高性能な機体より熟練パイロットの技倆の方が怖かった。戦馴れというのはどんな胆力のあるパイロットであっても、時間が必要だからだ。それはニュータイプと言えども同じである。ライラとて胆力のある方だったが、初陣では周りが見えなくなって、被弾したものだ。
「ジオンの亡霊がっ! ドムモドキがでしゃばるんじゃないっ」
「カミーユを殺らせない」
ライラとレコアの気魄がぶつかる。《リックディアス》の動きに追従して《カスタム》が体を入れ換えた。天頂方向に機体を流したレコアは《カスタム》をロックオンする。しかし、ライラはさらに左肩と左脚のスラスターだけを噴かして、MSの軌道を変えた。
二人の銃撃が虚空を貫く。
一旦離れた彼我の距離が挌鬪戦にまで近づいた。刹那、光刃が走る。二つの光束が一瞬で闇を切り裂き、相手に襲いかかった。
――ギィィィーン。
光刃と光刃が互いを斥力で弾こうとする。Iフィールドの発する高密電磁帯同士が反発しあい、火花――プラズマを散らした。
二撃、三撃。
繰り出された光刃は都度、相手の光刃に跳ね返される。レコアはランダムバインダーを噴かし、後退して距離を空け、ライラはバックパックのメインスラスターを噴かして間合いを取る。
「デリャアアアアアッ!」
「ハァァァァッ!」
ライラのビームサーベルが高く振りかぶられ、レコアのビームサーベルが横合いから襲いかかる。
――ガシィィィッ
宇宙空間に空気があれば、鍔競り合いの音が響いたことだろう。二機のMSのコクピットにはギシギシという関節の軋む音が響く。二人の技倆は拮抗していた。だが、殺意という意味では、レコアに必死さが足りなかった。
機体が一気に仰け反る。
レコアは激しい衝撃にコントロールパネルにヘルメットを打ち付けた。連続して叩き込まれる振り回した膝蹴りだ。
「もらったぁ!」
ライラは勝利を確信して吼えた。
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