第二部 黒いガンダム
第六章 フランクリン・ビダン
第五節 散華 第五話
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カミーユは焦っていた。
ライラ機に追い付かないことにも、エマ機が被弾したことにも、焦っていた。
――早く追い付かないと……
脱出から既に十五分以上が経過している。後続の追撃隊に追い付かれたりすれば、この状況は悪化するだけだ。ランバンとメズーンの《ジムU》では、敵の《クゥエル》を抑えきれないだろう。一刻もはやく、エマを助け出さなくてはならなかった。
カミーユの駆る《マークU》をレコアの《リックディアス》が追い抜く。重MSである《リックディアス》は機動性は《マークU》に劣るものの推力は上をいく。図体がデカイ分小回りが利かないという訳ではなく、《カスタム》や《クゥエル》並みの機動性を確保していた。言うなれば《マークU》の機動性が群を抜きすぎているのだ。
レコアは明らかに紫の《二本差し》に向かっていた。二本差しというのは、ビームサーベルを二本装備しているという俗称で、連邦製MSにおいては隊長機を意味した。《ガンダム》に肖って中隊長以上に許された特別仕様である。
あの隊長機は自分が抑えるから、カミーユには、エマを救出に向かえということだ。しかし、カミーユは拘りを捨てきれなかった。最新鋭機を預けられていながら、追い詰めきれなかったことが、余計に悔しかった。そして、敵のパイロットの技倆が高いと判るが故に、レコアが気掛かりなのだ。
だが、それはエマと母親を見捨てることになりかねない。迷っている場合ではない。
――《リックディアス》なら、心配ない!
自分にいい聞かせるように、心の中で言い切った。《リックディアス》は装甲も厚く、火器も豊富だ。レコアと《二本差し》は互角に戦える。技倆は《二本差し》の方が上だが、機体性能は明らかに《リックディアス》が上である。
決心してエマ機に向ける。気付いた一機の《カスタム》が、カミーユにビームを放つ。矢襖の如く降り注いだそれを掻い潜り、もう一機のエマ機に取り付いた方に接近を図った。
――止まれ! コイツがどうなってもいいのか?
紫の《カスタム》が左の拳を突きだす。光学カメラを操作して望遠を掛けると、何かを握っていた。デジタル補正を掛け、さらに拡大すると、紺地のノーマルスーツが写し出された。
「なにっ」
カミーユは急制動を掛けた。
MSの手に握られているのは一人だ。ヒルダか、エマか。バイザーの降りたノーマルスーツの中までは判別できない。だがどちらにせよ、人質を取られたのだ。下手に動くことはできなかった。
「ちっ!」
舌打ちをして、加速を殺すと、相対速度を0に保つ。途端、警報がなった。もう一機の《カスタム》が照準を固定したのだ。こちらのビームライフルの射程外である。
――大人しく《ガンダム》を明け渡せ!
片手
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