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機動戦士ガンダム0086/ティターンズロア
第二部 黒いガンダム
第六章 フランクリン・ビダン
第五節 散華 第五話
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を突き出した《カスタム》のパイロットががなる。ライルの声である。

 ライルはチャンスだと考えていた。敵に味方したティターンズの士官なら、殺しても文句は言われない。一機は銃撃でボロボロにしてしまったが、もう一機、無傷の《ガンダム》を捕獲できれば、帳消しどころかお釣りがくる勘定だ。

――《ガンダム》のパイロット、聞こえてるんだろう! 機体を捨てて投降しろ。命は助けてやる。

 どうするか。エマを見捨てることも、母親を見殺しにすることも、カミーユできなかった。雁字絡めになった自分に、親への情が残っていることをは自覚せざるを得なかった。救出に行ったのは、バスクの遣り方の汚なさへの腹立ちと考えていたし、士官学校に入学したときに親子の縁は切ったつもりだった。そんな自分への戸惑いも悛巡を深くする。

「今、ビームライフルとシールドを捨てるっ」

 カミーユの《マークU》がビームライフルを放し、シールドがマウントラッチから外れた。両手を前に向け、抵抗の意志がないことを示すしかなかった。

(どうすればいいんだ!)

 その時、狙撃手の《カスタム》が、明らかに牽制のビームを放つ。狙いは《マークU》ではない。レコアへ放ったのでもない。では、誰が?

「その手を放せぇぇぇぇー!」

 メズーンはコクピットで絶叫した。

 目の前の状況に、自分の母親が死んだときのことがオーバーラップする。

 ビームサーベルを抜き放ち、メズーンが最大加速で突進した。不意を突かれたライルは初動が遅れる。横合いから飛び込んできたメズーンは上段からビームサーベルの光刃をライル機の左下腕へ叩きつけた。

――んのやろぉっ!

 激昂したライルはエマ機を払いのけ、反対の手のビームサーベルを抜き放った。そのまま、メズーン機に突き入れる。考えてできる速度ではない。メズーンが飛び込んだ瞬間、反射的に動いたのだ。

――メズーン先輩!
「!」

 吸い込まれるように、ライルが繰り出したビームサーベルの光刃がメズーン機のコクピットに消えていった。

――メズーン先輩! おふくろ!

 ビームサーベルの光刃は、完全に機体を突き抜けていた。そして、その位置には熱核融合炉と増槽につながる配管がある。

 目の前で起こっていることが理解できなかった。カミーユの位置から母親を助けに行けば自分が爆発に巻き込まれる。だが、体が反応していた。

――駄目だ!間に合わない!

 後ろから前に回り込んだランバンがカミーユを引き留める。カミーユにだって、間に合わないことは解っていた。だが、見殺しにするのか?

――カミーユ……。

 ヒルダの哀しそうな声が聞こえた気がした。そして、静かに爆発が起こる。

 宇宙空間では爆発音は聞こえない。ただ
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