第二部 黒いガンダム
第六章 フランクリン・ビダン
第五節 散華 第五話
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を突き出した《カスタム》のパイロットががなる。ライルの声である。
ライルはチャンスだと考えていた。敵に味方したティターンズの士官なら、殺しても文句は言われない。一機は銃撃でボロボロにしてしまったが、もう一機、無傷の《ガンダム》を捕獲できれば、帳消しどころかお釣りがくる勘定だ。
――《ガンダム》のパイロット、聞こえてるんだろう! 機体を捨てて投降しろ。命は助けてやる。
どうするか。エマを見捨てることも、母親を見殺しにすることも、カミーユできなかった。雁字絡めになった自分に、親への情が残っていることをは自覚せざるを得なかった。救出に行ったのは、バスクの遣り方の汚なさへの腹立ちと考えていたし、士官学校に入学したときに親子の縁は切ったつもりだった。そんな自分への戸惑いも悛巡を深くする。
「今、ビームライフルとシールドを捨てるっ」
カミーユの《マークU》がビームライフルを放し、シールドがマウントラッチから外れた。両手を前に向け、抵抗の意志がないことを示すしかなかった。
(どうすればいいんだ!)
その時、狙撃手の《カスタム》が、明らかに牽制のビームを放つ。狙いは《マークU》ではない。レコアへ放ったのでもない。では、誰が?
「その手を放せぇぇぇぇー!」
メズーンはコクピットで絶叫した。
目の前の状況に、自分の母親が死んだときのことがオーバーラップする。
ビームサーベルを抜き放ち、メズーンが最大加速で突進した。不意を突かれたライルは初動が遅れる。横合いから飛び込んできたメズーンは上段からビームサーベルの光刃をライル機の左下腕へ叩きつけた。
――んのやろぉっ!
激昂したライルはエマ機を払いのけ、反対の手のビームサーベルを抜き放った。そのまま、メズーン機に突き入れる。考えてできる速度ではない。メズーンが飛び込んだ瞬間、反射的に動いたのだ。
――メズーン先輩!
「!」
吸い込まれるように、ライルが繰り出したビームサーベルの光刃がメズーン機のコクピットに消えていった。
――メズーン先輩! おふくろ!
ビームサーベルの光刃は、完全に機体を突き抜けていた。そして、その位置には熱核融合炉と増槽につながる配管がある。
目の前で起こっていることが理解できなかった。カミーユの位置から母親を助けに行けば自分が爆発に巻き込まれる。だが、体が反応していた。
――駄目だ!間に合わない!
後ろから前に回り込んだランバンがカミーユを引き留める。カミーユにだって、間に合わないことは解っていた。だが、見殺しにするのか?
――カミーユ……。
ヒルダの哀しそうな声が聞こえた気がした。そして、静かに爆発が起こる。
宇宙空間では爆発音は聞こえない。ただ
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