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機動戦士ガンダム0086/ティターンズロア
第二部 黒いガンダム
第六章 フランクリン・ビダン
第五節 散華 第三話
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 敵機の動きをトレースして、確実に動きを封じるポイントを探す。全周天モニターにターゲットカーソルが浮かび、加速減退率や重力波を算出し、機体位置が変わる度に弾道が補正される。相互関係の問題もあるが、予測範囲の設定が大事だ。牽制弾を撃つか――いや、それよりも、ライルに追わせて、敵の注意を逸らす方が賢明だ。スナイパーのプライドもある。ライルなら援護射撃も不要だ。

 近接戦も打撃戦もライラやライルの方が上となれば、畢境、射撃――それも慎重に狙いを定めて撃ち抜く狙撃に磨きを掛けるしかない。精密射撃はハプニングを想定して、射撃後即移動しなければならない。同じところにいつまでも居れば、敵の反撃に遭う可能性もある。当然、離脱も予定の内だ。普段なら、ライラのトリッキーな動きとライルの猪突猛進さがいい攪乱になる。今はライルしかいないが、敵はたった一機だ。ライルの位置を確認して、予測位置に照準を合わせた。

 カークスの機体が装備しているのはBLASH社製L55CVサイドワインダーで、標準装備のビームライフル――BOWA社製BR84Aより集束率が高く、その分、精密射撃が必要だった。大戦中に使用されたL4ビームスナイパーライフルの後継で、より高い集束率と速射性が特徴である。最新技術により、針のように細められた光弾は、貫通性は高いものの被弾有効範囲が狭い。そのため、クリーンヒットでなければエネルギーが拡散してしまい、有効打とならなかった。スーズ社製高性能複合型センサーを搭載しているRGM―79V《ジム・スナイパーアドバンスド》の標準装備の狙撃用ビームライフルだ。

「スナアドならもっと楽なんだろうに…」

 カークスの機体は狙撃用にカスタムされてはいるが、所詮は汎用機である。その分、狙撃補正の最適化に限界があった。ライフルの性能を最大限に引き出すには、センサーの精度が足りない。そしてそれを補うのはカークスの腕だ。

 通称《スナアド》は少数量産ではなく、アナハイム・エレクトロニクス社のアップデートプランであり、なかなか配備されない現実がある。精密射撃において《カスタム》に比べ射撃精度が三割も高くなっているが、コストが五割増しとあって、特殊部隊に十数機が配備されただけだった。しかし、ティターンズや地球居住者中心のコンペイトウ鎮守府への配属を希望しても叶わない宇宙居住者からすれば、僅かな希望だけはある機体だ。

「五、四、三、二、一……!」

 カークスのスナイパーライフルが火を噴く。吐き出された針のような青く光る集束帯が、エマの《ガンダム》の左膝を貫いた。派手な爆発はない。誘爆の危険はなかった。だが、駆動系が破損すれば、あの微妙な軌跡は無理だ。

「宇宙で地球人に負けられるかってんだ!」

 それが宇宙居住者のプライドだろうか。

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